2019 Fiscal Year Research-status Report
紫外線個人曝露量測定システムの構築および紫外線至適量通知システムの開発
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18K19758
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
衛藤 憲人 東海大学, 工学部, 准教授 (60365228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西脇 祐司 東邦大学, 医学部, 教授 (40237764)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | UV至適量 / UV Dosimeter / ビタミンD / 個人曝露量 |
Outline of Annual Research Achievements |
日光紫外線(以下UV)への過剰な曝露は健康への負の影響を有する一方,適度な曝露はビタミンD(以下VD)生成に関与する有益な側面も持つ.その至適量推定には,ヒト行動に伴うUV曝露量を明らかにする必要がある.これまで我々はヒト行動と同期した条件下にてUV曝露量を測定するシステムを構築し,すでに精度,妥当性および実Fieldでの疫学調査の結果を報告してきた.同システムは小型のセンサを用いることから,任意の体表部にセンサを直接装着しUVの実量を測定することが可能である.一方その構造上,センサと本体に接続ケーブルを有し,煩雑性・外見の問題等から完全非拘束条件下において長時間測定することは困難であった.そこで近年長足の進化を遂げた電子・無線技術を応用し,センサ部を大幅に小型化することでwire-less化を実現,完全非拘束下における任意部位における個人曝露量測定を可能とするシステム構築を目指している. 我々が使用するUVセンサは数mm四方のサイズであり,小型無線モジュールと回路基板・バッテリを合わせても表面積1~2cm2,厚さ数mmの極めて小型のデバイスとなる. よって同機器を体の各部に装着することで任意部位のUV量をreal timeにwire-lessにてSmart Phone等に転送・記録することが可能である.今後我々は,同デバイスを発展させ,健康影響(紅斑・メラニン量変化)を引き起こす皮膚UV曝露量を監視し,Smart Phone等によりUV曝露の過剰・不足をreal-time通知するアプリケーションの開発を目指す.同アプリケーションの実現は,過剰なUV曝露を避けつつ,必要量を摂取(曝露)するという,世界的にみて全く新規の試みであり.超高齢社会を迎え,施設入所者が増加し続けている現在, 一次予防の一助となる可能性を有し,日本人の健康増進に大きな貢献を行うものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は, 日々我々が曝露するUVを任意の部位に装着した小型センサにてreal-time計測し, 血中VD量生成に必要な曝露量をSmart Phone等により通知するシステムの構築である.同目標を達成するには,(1)正確な個人UV曝露量を測定する手法の開発, (2)血中VD生成におけるUV曝露量と食事摂取VD量の関連性を明らかにする, (3)通知アプリの開発の3課題を達成する必要がある. 課題(1)に関し, ヒトが曝露するUVの総量を正確に測定するには皮膚露出部位全てにセンサを装着する必要があるが現実的には困難である. そこで任意の部位(例えば手腕部)を基に他部位の曝露量を推定する手法の実現性について詳細に検討を行った.結果, 高い妥当性を持って他部位の曝露量を推定しうる換算係数を得るに至った[1].加えて小型無線デバイスを使用することでwire-lessで測定データをPC, Smart Phoneに送信・記録する技術実現に目処が立ち, 煩雑性を上げることなく正確なUV個人曝露量の測定が可能となった. さらに課題(2)の解決を目指し, 共同研究者の有するFieldにて疫学調査を実施した. 具体的には緯度の異なる2つのField(北海道・熊本)にて60名の被験者をrecruteし, 異なる季節(夏・冬)における血中VD濃度とUV曝露量・食事摂取VD量の測定を行った. 結果, 血中VD生成に必要なUV曝露量の一つの目安を得るに至った[2]. これらの結果を基に, 来期, 課題(3)の通知アプリの作成に取り掛かる予定である.
[1] N. Eto, et al. Toho J of Med. 6(1). p.30-40. 2020., [2] K. Asakura, N. Eto, et al., Nutrients. 12(3). 2020.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最大の目標であるヒトUV曝露量の至適量通知システム実現に向け,大きく2つの課題が存在する. 1つ目はこれまで開発・設計してきたプロトタイプの実機製作・実証実験である. 実証にはある程度まとまった数(数十~百個程度を想定)の外注製作が必要となり, 今年度中頃に発注・実機製作を行い, 実証実験に移行することを予定している(ハードウェア課題). 2つ目は通知システムのソフトウェア開発であり, これまで得られた知見を基に, Smart Phone上にreal-timeでUV至適量を通知するシステムを目指している(ソフトウェア課題). 基本的な技術設計は完了していることから,ハードウェア課題の実現は比較的順調に推移すると考えられるものの, 部品確保・実機試作への影響ならびに屋外でのボランティアを交えた実証実験への新型コロナウィルスの影響が危惧される. 一方, ソフトウェア課題に関しては基本的に研究室内で実現できることから時間的な遅延は起きにくいと考える. 現在,一部部品の生産停止および新型コロナウィルス による影響により若干の研究の遅れが出ているが,概ね予定通りに進行していると考える.
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Causes of Carryover |
本研究は課題実現に向け,個人UV曝露量Wire-Less測定システムの構築(2018~2019年前半期, 18ヶ月,完全に非拘束な条件下に おける各皮膚表出部位のUV曝露量測定を可能とするシステムの試作),構築システムを用いた疫学調査(2019後半期~2020年前半期, 12ヶ月) ,UV曝露量監視・通知アプリケーション構築(2020年後半期, 6ヶ月)を想定していた.一方,共同研究者の有するFieldにおいて疫学調査が先行実施されたことから,最終的な目標である至適量通知アプリケーションに必要な曝露データを2019年度に収集し,研究の進行に変更が生じている(アプリケーションの構築が先行し,システム構築がこれに続く形となっている).なお現時点においてシステム・アプリケーションに必要なデータを取得できたことから,研究全体の進行に変更はない.
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