2019 Fiscal Year Research-status Report
異常通信の発生要因特定能力を備えた次世代ネットワークトモグラフィの開発
Project/Area Number |
18K19804
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 功 東京工業大学, 工学院, 教授 (50230446)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | サイバー攻撃検出 / ネットワークトモグラフィ / 拡大ODフロー行列 / グループスパース / 拡大ODフローテンソル |
Outline of Annual Research Achievements |
高度なネットワークトモグラフィを実現するためには、対象とするネットワークの状態を、行列やテンソルや関数によって表現し、これらを正常な成分と異常が疑われる成分に分解し、異常検知を可能にする数理的な分析法を開拓することが不可欠となる。そこで まず、多次元情報の効率表現を可能にする数体系として注目される超複素数(ケーリー・ディクソン数)を成分に持つテンソルを応用する可能性を探るために、[Gandy-Recht-Yamada'11: Inverse Problems, 2011]で開発した低ランクテンソル補完法のアイディアをCayley-Dicksonテンソルを拡張する問題に取り組み、その解法アルゴリズムを実現している。 次に、区分的連続な多次元信号のの不連続点位置が異常生起点に対応付けられることに注目し、区分的連続関数の有限サンプルから不連続点の位置を推定可能にする方法を開発している。さらに、異常状態を情報表現するのに相応しい低次元ベクトル空間決定問題が正規直交縦長行列に関する最適化問題の特別な例となることに注目し、Stiefel多様体上の最適化問題の新解法の着想を得ている。このアイディアは、かつて申請者らが提案していたケーリー変換を用いた直交行列の最適化戦略[Yamada-Ezaki,2003]の非自明な一般化となっており、ベクトル空間上で開発された先進的な最適化戦略を直接移植できる特長を持っている。その他にもテンソル情報の分析表現として注目されるCP分解(Canonical Polyadic Decomposition)に対して、信頼できる解法を実現するために、複数行列の近似同時対角化問題に対する新解法[Akema-Yamagishi-Yamada 2019]を利用することを検討し、その有効性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高度なネットワークトモグラフィの実現には従来のデータ分析を発展させた新たな基盤を構築する必要がある。2019年度は本プロジェクトの目標に沿った分析を可能にすることが期待される新たなデータ分析法の着想を得ており、その初期検討結果を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に着想を得た新たなデータ分析法をより強力なものに発展させることにより、ネットワークの異常検知への効果的な応用法を検討したい。
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Causes of Carryover |
(理由) 従来のネットワークトモグラフィに使われる行列分解をテンソルデータに拡張するためにテンソルCP分解を高精度に実現する数値解法アルゴリズム開発に取り組んだ。解法の方針検討のための調査段階で、非自明な工夫を加えることにより、本研究プロジェクト初年度から開発に取り組んできた「複数行列の同時近似対角化アルゴリズム」が上手く応用できることに気が付いた。CP分解のための基本方針が当初予定より早い段階で決まったため、文献調査や事前シミュレーションのために見積もっていた費用を削減することができた他、コロナウイルスの影響で2020年3月に予定されていた国内出張(那覇)が中止になり、繰越金が発生することになった。
(使用計画) 2020年度はプロジェクト最終年度にあたるため、プロジェクトのこれまでの研究成果発表の他、研究成果の更なる発展のためのシミュレーション検討を進める予定である。繰越金と2020年度の交付金を併せ、シミュレーション用計算機の購入の他、論文発表、国際会議、国内研究会等での成果発表での使用を計画している。
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