2019 Fiscal Year Research-status Report
日独近代化における〈国民文化〉と宗教性―学際的・国際的共同研究基盤の強化
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18KK0004
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
前田 良三 立教大学, 文学部, 教授 (90157149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 浩 明治学院大学, 国際学部, 教授 (60434205)
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任教授 (30208912)
シュルーター 智子 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任助教 (10825186)
小柳 敦史 北海学園大学, 人文学部, 准教授 (60635308)
Weiss David 立教大学, 文学部, 助教 (80830273)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 国民性の文献学 / プロテスタント神学 / ヘルマン・ヘンドリッヒ / リヒャルト・ウンゲヴィッター / 新渡戸稲造 / 芳賀矢一 / 中華概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は19世紀後半以降のドイツにおける多様な「国民文化」概念の成立と展開において、伝統的宗教に由来する宗教性が果たした機能を、同時代日本と比較対照しつつ多角的に解明することを主目的とする。本年度の重点課題は、フェルキッシュ宗教運動、生改良運動、教育改革・民衆教育運動、さらには芸術運動、学問的ドイツ文化論、現象学運動、人間学運動等において提唱された「国民文化」構想における宗教性を代表的具体例に即して分析することにある。研究代表者・分担者は国際共同研究の拠点となる海外の研究機関に滞在し、研究協力者と協同して主に以下の個別研究を行った。ただし新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け海外渡航が不可能となった結果国内での資料調査に切り替えた研究もある。 ①前田良三(研究代表者)「日独国民文学のカノン化過程における宗教的要素と文献学の関連」(研究機関:ベルリン・フンボルト大学、ハンブルク大学,ボン大学)。②久保田浩(研究分担者)「プロテスタント自由主義神学者ならびに保守主義神学者の著作、教会関連機関誌における「国民」「民族」概念の検討」(ハイデルベルク大学)。③深澤英隆(研究分担者)「ドイツ・ナショナリズム運動と視覚文化の相関」(バイエルン国立図書館、ハイデルベルク大学)。④小柳敦史(研究分担者)「ワイマール期ドイツ保守革命運動における民衆教育、国民教育の基礎資料研究」(国内)。⑤シュルーター智子「新渡戸稲造の東西文化媒介言説における宗教性の検討および薔薇十字運動におけるユートピア思想の分析」(テュービンゲン大学)。⑥ヴァイス、ダーヴィッド「近世・近代日本の国民文化言説における<中華>概念の検討」(ハーバード大学)。これら個別研究の成果は国際学会における口頭発表および学術誌への論文投稿によって公にされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初予定していた海外研究機関における研究資料の調査・収集作業と海外の研究協力者との共同研究のうち、研究代表者(前田)および研究分担者3名(久保田、深澤、シュルーター)の個別研究は、令和1年6月から9月までに計画に従って実施した。また、収集した資料の整理やデータベース化の作業もこれと平行して進捗している。その意味で、研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。 一方、令和2年3月に計画されていた研究分担者1名(小柳)の海外研究は新型コロナウィルス感染拡大により中止を余儀なくされた。ただし小柳は事前に来日した研究協力者F・W・グラーフ教授(ミュンヘン大学)との研究打ち合わせを行い、海外研究の細部の詰めは完了している。令和2年2月に計画していた第2回ワークショップも、同じ理由により開催を見送ることになった。このため、研究代表者および各研究分担者の意見交換と研究計画の検討の機会を十分に取ることが不可能となった。さらに令和2年3月に予定されていた海外研究協力者候補のP・ポール博士(インスブルック大学)の来日も中止となったため、次年度の研究計画の具体的立案を見直す必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度に実施予定だった海外研究の一部が新型コロナウィルス感染拡大のため中止となり、現時点で海外渡航の再開の見通しがまったく立たない状況に鑑み、本年度前半は当初計画のうち国内で実施可能な部分、すなわち近代化論の基礎概念の理論的再検討に集中的に取り組む。ただし国内での研究集会も当分実施不可能と判断されるため、研究代表者・分担者相互にオンラインあるいはメールによる討議を行い、その結果を共著論文としてまとめることを目指す。一方海外研究機関・研究協力者とはメールなどにより密接に連絡を取り合っており、海外渡航が再開されるのを待って、令和1年度に中止された資料調査・収集をはじめ、昨年度に引き続いてフェルキッシュ運動、文学・芸術革新運動、宗教革新運動、ドイツ文献学・宗教学の学問史に関する一次資料の調査・収集をより効率的かつ集中的に行うべく、準備を整える。ただし、本年度開催が予定されていた国際ドイツ語ドイツ文学会世界大会(パレルモ)および国際宗教史学会(ダニーデン)が次年度以降に先送りされたのを受け、これらの学会で予定していたパネル発表の準備は次年度当初の課題とする。 さらに国際共同研究加速基金という本研究課題の性格に鑑み、また新型コロナウィルス感染拡大による海外渡航禁止が長期化した場合に備え、海外の研究機関および研究協力者とのオンラインのコミュニケーション態勢の整備を緊急の課題として進めるとともに、研究期間の延長申請も視野にいれて、今年度後半および次年度の研究計画を柔軟に策定する。
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Causes of Carryover |
旅費のうち研究分担者小柳敦史が令和2年3月に実施予定だった海外研究が新型コロナウィルス感染拡大により中止となったため、令和2年度にこの海外研究を延期して実施する。 人件費(謝金)のうち令和2年2月に実施予定だったワークショップが同上の理由で中止となったため、令和2年度にこのワークショップを開催し、そのための講師謝金とする。
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Research Products
(13 results)