2021 Fiscal Year Research-status Report
日独近代化における〈国民文化〉と宗教性―学際的・国際的共同研究基盤の強化
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18KK0004
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
前田 良三 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (90157149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 浩 明治学院大学, 国際学部, 教授 (60434205)
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任教授 (30208912)
シュルーター 智子 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任助教 (10825186)
小柳 敦史 北海学園大学, 人文学部, 准教授 (60635308)
Weiss David 九州大学, 人文科学研究院, 講師 (80830273)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | 大ドイツ美術展 / フェルキッシュ・フェミニズム / ゲオルク・ジンメル / カレンダー改革 / J.V.アンドレーエ / 岡正雄 / アドルフ・ツィーグラー / ルートヴィヒ・クラーゲス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀末から戦間期のドイツの「国民文化」諸概念の成立と展開の過程で、伝統的宗教に由来する宗教性が果たした機能を、同時代日本と比較対照しつつ学際的・領域横断的に解明することを主目的とする。本年度は特に、研究代表者・分担者全員で、昨年度までの成果を理論面から総括し、従来の近代化論の枠組みを形づくってきた歴史学・社会学・宗教史・文化史の基本概念の再検討を行った。一方、計画していた海外における研究資料の調査・収集は、新型コロナウイルス感染状況に鑑み中止し、一部をオンラインによる資料収集に切り替えるとともに、前年度までに収集した資料を、上記の概念検討作業との関連でさらに分析し、その成果を検討し、口頭発表・論文として発表した。個々のテーマは以下の通り。 ①前田良三(研究代表者)「近代日独美術史における国民文化の問題」、②久保田浩(研究分担者)「1920・30年代ドイツにおけるフェルキッシュ宗教運動・思想で展開と「古代母権制社会」表象、20世紀初頭のドイツにおける「公共圏」の形成過程」、③深澤英隆(研究分担者)「ゲオルク・ジンメルの宗教論、ルートヴィヒ・クラーゲスとそのクライスの文化論の検討」、④小柳敦史(研究分担者)「19世紀後半から20世紀初頭のドイツにおけるカレンダー改革運動にみるナショナリズムと民族主義」、⑤シュルーター智子(研究分担者)「薔薇十字運動の端緒とJ.V.アンドレーエによる結社構想、19世紀後半から20世紀初頭にかけての薔薇十字運動(近代薔薇十字運動)の展開」、⑥ヴァイス、ダーヴィッド(研究分担者)「近代日本の「日鮮同祖論」における『古事記』・『日本書紀』の受容、戦間期民族学における日独の学的交流」。令和4年3月にオンラインによるワークショップを開催し、研究成果を全員で討議した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初予定していた海外研究機関における研究資料・収集の作業は、新型ウイルス感染状況とそれに基づく海外渡航の制限により、前年度に引き続いて実施を見送ることとなった。しかし、すでに平成30年度・令和1年度に資料調査・収集作業の基本部分を実施しており、加えて一部の資料の収集範囲をデジタル・アーカイヴ収蔵データに限定することにより、未収集資料が残っているものの、この面での進捗状況に大幅な遅延は生じていない。また、令和2年度には延期された国内・海外におけるシンポジウムが令和3年度に一部実施されたため、研究成果の口頭発表に関しては、ほぼ予定通り行うことができた。さらに、研究成果の一部を著書、翻訳書、論文としてまとめる作業は、順調に進捗した。 以上を総合して、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は本年(令和3年)度をもって終了する予定だったが、研究内容のさらなる精緻化・体系化のため、期間をさらに1年間延長し、以下の研究を集中的に進める方針である。 ①新型コロナウイスル感染の拡大により、海外における研究資料の調査・収集の作業に未完了の部分がある。未調査・未収集の資料には、現地における資料の実見、調査が不可欠な視覚芸術資料、未刊行資料が含まれている。今年度は、これらの資料収集作業を、研究代表者・分担者が海外で可能な限り実施する。②本研究プロジェクトの実施を通じて、国際共同研究の新たな形式を模索してきた。とくに「ウイズ・コロナ」あるいは「アフター・コロナ」と言われる状況を踏まえて、これからの国際共同研究のあり方について、海外の共同研究者との討議を深め、今後の研究協力体制を構築する。③国際共同研究の成果の一部を、研究期間終了後にドイツ語の論文集の刊行も計画している。9月にワークショップを開催し、論文集の内容・構成を討議・決定するとともに、年度内に原稿作成を完了する。また、ワークショップには講師を招き、「近代化」論の基本概念の検討を行う。④本研究とその前提となった国際共同研究の成果を、日本語の論文集として刊行する。目下編集作業を進めており、年度内の刊行を予定している。⑤共同研究者であるロベルト・ホレス教授(テュービンゲン大学)と協同し、令和5年2月に国際シンポジウム(オンライン形式を予定)を開催する。このため、講演者・発表者に対する謝礼を計上する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染状況に鑑み、令和2年度に引き続いて本年度も研究代表者・分担者の海外における研究資料調査・収集作業を延期した。したがって、旅費が未使用となり、またワークショップ等もオンライン開催としたため、準備と運営にかかる人件費が発生しなかった。 次年度は、海外における研究資料調査・収集作業を行うので、未使用の旅費をこれに当てる。また、研究成果の一部を含む日本語の論文集の刊行準備を進めており、このための校閲・事務作業等の人件費、刊行された論文集を共同研究者・研究協力者に配布するための物品費にも使用する。
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