2020 Fiscal Year Research-status Report
Tbilisi avant-garde as a multilingual and multicultural art movement: research and examination based on historical materials
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18KK0008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Grecko Valerij 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (50437456)
八木 君人 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (50453999)
楯岡 求美 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60324894)
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Project Period (FY) |
2019-02-07 – 2022-03-31
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Keywords | トビリシ・アヴァンギャルド / 多言語多文化主義 / コスモポリタニズム / 亡命文学 / アーカイブ調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1917年から21年にかけての独立運動と第一次民主共和国の時代にトビリシで展開されたアヴァンギャルド芸術運動について、まだほとんど手つかずのまま各所に散逸している資料を発掘・調査することにより、その全体像を把握し、国際的アヴァンギャルド芸術運動の歴史に占める位置と影響関係を明らかにすることである。 2020年度には本来、日本側研究者全員がトビリシに滞在して資料調査を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症パンデミックで海外渡航が不可能になったため、ジョージア国内の状況がある程度良好な時期にトビリシの研究協力者にこちらが指定する資料を調査してもらうにとどまった。また、ジョージア側の中心的研究協力者のA.カルトゥージア教授(トビリシ国立大学)を招聘して開催予定だったシンポジウムも延期せざるを得なかった。3度オンラインで研究会を開催し、それには適宜カルトゥージア教授や、アヴァンギャルド研究の第一人者であるK.イーチン教授(ベオグラード大学)にも参加してもらい、意見交換等を行った。 2020年度は前年度の現地調査で入手した資料をもとに、当時トビリシで活動していた各国出身の芸術家たちのネットワークを確認する作業が中心となった。その結果、ジョージア・モダニズム文学の創始者G.ロバキゼがドイツ語圏の作家たちと深いつながりを持っていたこと、当時まだ新しいメディアであった映画(ジョージア・フィルム・スタジオ)が芸術家たちの重要な活動の場になっていたこと、トビリシの多言語状況がロシアから来た芸術家たちに大きな影響を与えたこと(たとえばクルチョーヌイやズダニエヴィチの実験的詩的言語にはジョージア語やアルメニア語の要素が入り込んでいること)がわかった。2020年度はこれらの研究の成果を発表する場(国際学会など)も限られていたが、それぞれ論文にまとめつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症パンデミックで2020年度中の海外渡航が不可能になってしまい、本研究課題の最も重要なミッションである現地での資料調査を行うことができなかったため。また、当初はオンライン会議の扱いに不慣れだったこともあり、予定していた国際シンポジウムも開催できず、小規模な研究会を開催するにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航が可能な状況になり次第、日本側研究者全員がジョージアに赴き、数週間トビリシに滞在して、現代歴史博物館、文学芸術アーカイブ、レオニゼ文学博物館、国立国会図書館等を訪問し、歴史的資料を体系的に調査する。調査にあたっては、カルトゥージア教授、イーチン教授をはじめとするアヴァンギャルド研究者のアドヴァイスや協力を得る。 調査した資料をもとに、各国出身の芸術家たちがナショナリティを超えてどのようなグループを形成し、どのような成果を残したかを確認する。効果的に研究を遂行するために、特に重要となる3つの文化圏、すなわちロシア(担当:楯岡、グレチュコ、八木)、ドイツ(担当:増本、グレチュコ)、ジョージア(担当:楯岡、グレチュコ、八木)の文化的背景をもつ芸術家に焦点を絞る。 2021年度中に海外渡航が可能になるとしても、年度の後半であることが予想されるので、それまではトビリシの研究協力者ともコンタクトをとりつつ、すでに入手した資料をもとに論文等を執筆して、国内外の学会誌等で発表する。歴史的に貴重な資料に関しては、解説を加えた資料集を作成する。作業の進捗状況の確認と意見交換のために、オンライン会議システムなどを活用して、研究会を開催する。状況が許すようなら、カルトゥージア教授を日本に招聘し、国際シンポジウムを開催する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症パンデミックで2020年度中の海外渡航が不可能になり、さらに日本側研究者が所属する各大学が設けた活動制限により国内の移動も困難になってしまったため、外国出張・国内出張がまったくできなかった。また、ジョージア側の中心的研究協力者であるカルトゥージア教授を日本に招聘してシンポジウムを開催する予定だったが、それも延期せざるを得ず、旅費の支出が0となった。本研究課題では予算の大部分を旅費として支出する計画になっているため、多額の次年度使用額が生じる結果となった。 2021年度は海外渡航が可能になり次第、日本側研究者全員が数週間程度トビリシに滞在し、資料調査を行う。トビリシでの資料調査にはアヴァンギャルド研究の第一人者であるイーチン教授にも参加してもらい、協力を得る。調査を効果的に行うには現地の研究者の協力が不可欠であり、謝金(専門的知識の提供と予備調査)が必要となる。また、外国人の日本入国が可能になれば、カルトゥージア教授を日本に招聘して国際シンポジウムを開催する。
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