2019 Fiscal Year Research-status Report
Tracing the footsteps of the Jewish refugees who sojourned in wartime Japan and Shanghai: a transboundary and multilateral research
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18KK0031
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
菅野 賢治 東京理科大学, 理工学部教養, 教授 (70262061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZINBERG YAKOV 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (50348885)
佐藤 憲一 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (80548355)
三添 篤郎 流通経済大学, 経済学部, 准教授 (40734182)
西村 木綿 (西村木綿) 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (30761035)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | ユダヤ / 難民 / 杉原千畝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦時期の日本と上海を経て世界に散っていったユダヤ難民たちの足取りを史資料によって裏付け、戦後、彼らが多言語(英語、ドイツ語、イディッシュ語、ポーランド語、スペイン語、フランス語、現代ヘブライ語など)で残した証言を可能な限り広く収集して後世の参照に供することにある。 当初の研究実施計画にもとづき、2年目に当たる令和元年度は(1)「杉原サヴァイヴァー」たちの実数を実証的に把握する作業を行い、(2)元・難民たちの証言集(ヴィデオ証言からの書き起こしを含む)の作成に向けて証言者らのリストアップを行い、(3)上海「無国籍避難者指定居住区」に関する研究(とりわけ實吉敏郎日誌の分析)を行い、(4)研究成果を随時、日英二語の特設ホームページ(別途、受け入れ中の基盤研究と共通)上で公開したことにより、計画どおり、むしろ計画以上の成果を上げることができたと考える。 とりわけ、上記(1)~(3)の研究成果を「研究成果報告書 中間報告(1)ユダヤ難民たちのリストと実数の特定」と題する冊子にまとめ(2019年9月10日)、国立国会図書館に蔵書として受け入れてもらうことができたことは、大きな成果であった。 総じて、第二次大戦期、日本を経由したユダヤ難民をめぐって国内外で積み重ねられてきた言説の総体に対し、あくまでも一次資料にもとづいた実証研究の方法を貫き、時には既存言説の批判的再検証も辞さない本研究課題のスタンスは、少しずつではあるが着実に、日本国内ならびに海外の学術界の耳目を集めるようになってきている、と感じられる(例:上海での国際シンポジウムに講演者として招かれる、ポーランドの研究者より共同研究の打診がある、など)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、研究計画調書上では、三年目に行う予定となっていた「『杉原リスト』を起点、個々の杉原ヴィザ保持者(とその同伴者)の戦後の定住先を終点とみなし、その間を可能な限り、資料の裏付けを伴う実線で結ぶ(それにより「杉原サヴァイヴァー」たちの実数とその動向を実証的に把握する)」作業を2年目の半ばに完成させ、冊子として国立国会図書館に収めることができたことから、本研究課題は、当初の研究以上に進展している、と言い得る。 研究代表者は、本研究課題の初年度、ニューヨークの「ユダヤ共同分配委員会」本部で入手した一次資料を一つ一つ読み込みながら、リトアニア、日本、上海、以上三か所におけるユダヤ難民たちの処遇をめぐり、いずれも国内外に先行研究の例を見ない、きめ細やかな資料研究を遂行中である。 当該年度、海外の共同研究者アーノルド・ゼイブルは、戦後、オーストラリアに移住したイディッシュ語表現者イェホシュア・ラポポルトの遺稿に関する調査を分担してくださった。研究分担者、ヤコフ・ジンベルグは、日本を経由せず、ウラジオストックから上海に直行したユダヤ難民たちの足取りに関する調査を行い、佐藤憲一は、アメリカ合衆国ホロコースト記念館所蔵資料に関する調査を行った。三添篤郎は、既に入手済みの元ユダヤ難民たちのインタヴュー映像から、対象となるインフォーマントの絞り込みを行い、西村木綿は、日本に到来したユダヤ難民たちのなかでも、とりわけブンド派の集団に焦点を絞り、ポーランド人研究者マルティナ・ルシニャク=カルヴァト氏との共同研究体制を築いた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、本研究課題の採択以来、海外の共同研究者アーノルド・ゼイブルをオーストラリアから招聘し、研究分担者らの協力を得て、一般に広く開かれた国際シンポジウムの開催を、3年目、令和2年度に構想していた。折しも、学習院大学のトーマス・ペーカー教授も、科研費を活かし、ゲーテ・インスティトゥート東京との共催で、戦後75周年に当たる令和2年、日本と中国におけるユダヤ難民に関する国際シンポジウムを企画している、とのことだったため、本研究課題とのコラボレーションにより、2020年5月、ゲーテ・インスティトゥート東京と東京理科大学を会場とする、かなり大規模な国際シンポジウムの組織委員会を立ち上げ、その詳細をかなりのところまで詰めることができていた。 そして実際、2020年1月、国外からの参加者10名、国内の参加者、協力者、十数名に暫定プログラムを示し、企画を本格化させようとしたところで、今回の新型コロナウィルスの世界的感染拡大という事態となった。当然、次年度5月のシンポジウム開催は延期せざるを得ず、いまだ、新たな開催時期の目途は立っていない。 本研究課題のテーマと、すでに日本でなされた研究成果の周囲で、世界各国の研究者が一堂に会し、国際的共同研究体制の構築のための絶好の場となるはずであっただけに、きわめて残念な事態である。今後、世界におけるウィルス感染の趨勢が、本研究課題の推進方策を大きく左右するであろうことは明らかである。 海外での調査、海外からの研究者招聘はいうに及ばず、日本国内でも、出張や人との接触を要する調査・研究活動が不可能な状態が長引けば、当初の研究目的を達成する上で、大きな障害となりかねない。対応策として、オンラインをフルに活用した研究交流のやり方を真剣に考えていかねばならない。
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Causes of Carryover |
(1)2020年2月に開催した公開研究会「戦時期の日本と上海におけるユダヤ難民の多様性」のため、イスラエルから招聘する予定であったキリル・フェフェルマン氏が、新型コロナウィルスの感染拡大をうけて、急遽、来日を取りやめたことにより、旅費、滞在費を支出ができなくなった。 (2)「今後の研究の推進方策」の欄に記したとおり、当該年度の途中で、次年度(令和2年度)5月に、世界各国から研究者を招いての国際シンポジウム開催の計画が持ち上がり、招聘者の数、イベントの規模からみて、そこに相当の額が必要になる、との見込みから、研究代表者、研究分担者のいずれもが、当初より、今年度の配分額から一定額を次年度に繰り越すことを考えていたため。 たとえ新型コロナウィルス感染が比較的早期に終息したとしても、次年度内に使用できるか否か、現今のところ、まったく目途が立たない。関係者のあいだでは、企画されていた国際シンポジウムを2021年5月に開催したい、との意向であるが、そのための準備として、令和2年度から令和3年度へ、科研費の繰越金の制限を緩和するなど、配慮を求めたい。
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Research Products
(10 results)