2021 Fiscal Year Research-status Report
Tracing the footsteps of the Jewish refugees who sojourned in wartime Japan and Shanghai: a transboundary and multilateral research
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18KK0031
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
菅野 賢治 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 教授 (70262061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZINBERG YAKOV 国士舘大学, 研究所, 研究員 (50348885)
佐藤 憲一 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 教授 (80548355)
三添 篤郎 流通経済大学, 経済学部, 准教授 (40734182)
西村 木綿 (西村木綿) 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 講師 (30761035)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | ユダヤ / 難民 / 日本 / 上海 / 環太平洋地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の4年目となった2021年度は、2020年度同様、新型コロナ・ウイルスの世界的感染拡大により、研究の遂行に大きな障害が生じた。2020年5月に開催を予定し、その後、延期を余儀なくされていた国際シンポジウムは、いまだに開催の目途が立たず、代わって、その準備段階として構想されたインターネットWebサイトによる仮想シンポジウムも、残念ながら、前年度に見込んでいたような成果を上げることができずにいる。理由は、日本国内のシンポジウム主催者(本研究課題・研究代表者ならびに東京都内2大学の教授)が、基調研究発表として動画による研究報告、話題提起、参加の呼びかけを行なっても、国外からの参加予定者たち、およそ10名は、「実際に日本に行って、直接、研究発表をするのでなければ・・・」として、なかなか研究発表動画を作成、提供してくれなかったからである(動画によらない同期の国際会議も、参加予定者たちが世界中に分散しているため、時差の面で無理と判断された)。 しかし、この国際シンポジウムを開催できなかったことを除けば、研究課題への取り組み自体は概ね順調に進み、下記の通り、相応の研究実績を上げることができている。①オーストラリアの元ユダヤ難民一家の軌跡を描く映像資料「海でなくてどこに」(62分)の完成と公開、②本研究課題における海外の研究協力者アーノルド・ゼイブルのインタヴュー映像、ならびに彼を囲んでのオンライン・イベント(2020年10月)の記録映像の編集、③本研究課題の成果を基礎資料とする研究代表者の単著『「命のヴィザ」言説の虚構』刊行、ならびにこの著書をめぐる新聞、ラジオ、研究会などでの発信、④イスラエル国ヤド・ヴァシェム記念館での資料調査(現地在住の日本人研究者の協力を仰ぎつつ)、⑤上海のユダヤ難民をめぐる外国語文献の収集と分類。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のとおり、予定していた国際シンポジウムの開催の目途が立たず、おそらく最終年度内の開催可能性はきわめて低いが、それに代わるものとして、本研究課題の海外の研究協力者アーノルド・ゼイブルとのメール、Zoomでの連絡を密にし、研究成果の還元だけは疎かにすまい、と努めた結果、現在のところ、本研究課題の成果を反映した映像資料1本が完成、公開に漕ぎつけ、他2本がおおよそ完成に近づきつつある。 また、本研究課題の研究計画を立てた時点では、研究代表者・分担者も、おおよそ史実を反映したものと受け止めていた杉原千畝による「命のヴィザ」に関する言説が、一次資料にもとづく実証検分の結果、きわめて重要な部分で史実とはおよそかけ離れたものであったとの観察が得られ(その観察の手順と根拠を単著『「命のヴィザ」言説の虚構』にまとめた)、学術研究においては、当初の出発点と位置づけられていたものが、その研究の進捗そのものをつうじて大きな見直しを迫られる場面があり得る、ということを痛感させられている。いずれにせよ、その見直しを可能とした一次資料とは、本課題の研究期間の初期、いまだ海外渡航が不自由なくできる時期にアメリカ、ニューヨークでの現地調査の結果として入手できたものであったことから、基礎資料の踏査の重要性がますます浮かび上がる結果となった。 最終年度2022年度も、海外からの招聘や海外への調査出張はほぼ絶望視されるが、その不自由さを通信技術の活用によって補い、海外の研究者との連絡を密にすることによって、基礎資料の収集と分析に励み、本研究課題のおおむね順調な進捗状況を維持していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎える2022年度には、残された以下の課題に取り組む。①1940年夏、リトアニアのカウナスで「杉原ヴィザ」が発給された経緯に関する多言語(ヘブライ語、イディッシュ語、ロシア語)による一次資料の網羅と分析(イスラエル国、ヤド・ヴァシェム記念館所蔵資料)、②本研究課題の海外の研究協力者アーノルド・ゼイブルに関する2本の映像資料「喪失の記憶、物語の循環」ならびに「湾の抱擁」の完成と公開、③「上海無国籍避難民指定居住区」(いわゆる「上海ゲットー」)の設置過程に関する研究の総括、④国立国会図書館所蔵「外事警察報」の1938~44年部分を踏査し、関連する日本国内ならびに上海の情報を整理する、⑤本研究課題の期間内に予定していながら、新型コロナ・ウィルスにより現地調査が不可能となった海外(とりわけリトアニア、ドイツ、アルゼンチン)の資料館について情報を収集し、次なる研究計画の課題として引き継ぐ。 これらの成果を映像資料、最終報告の冊子体、ならびに大学紀要・学会誌等の発表論文として丁寧にまとめながら、次の研究課題への発展可能性を見極めていきたい。
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Causes of Carryover |
2020年5月に開催を予定していた国際シンポジウムの計画を、「コロナ終息後に延期」として2021年度に持ち越すことも見込まれ、特に研究分担者Yakov Zinberg教授に、海外からの研究者招聘のための手厚い配分を行なっていたが、結局、2021年度内の実施もままならず、2022年度へ繰り越さざるを得なかった。最終年度2022年度にも、国際シンポジウムを予定通り開催する目途は今のところ立っていないが(仮に海外からの研究者招聘が可能となっても、日本国内で多くの聴衆を集めたシンポジウムを開催するような社会的空気が醸成されていない[2022年4月現在])、そうした対面での学術交流が不可能である分、それを映像資料の制作、編集、公開によって補い、専用のインターネット・サイトをつうじて、広く世界に発信するための費用として振り替えていく。本研究課題の研究協力者で映像作家の大澤未来氏は、この国際シンポジウムに代わる映像資料の公開の必要性をよく理解してくださり、最終年度、さらに2本の映像資料の作成を引き受けてくださっている。
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Research Products
(11 results)