2018 Fiscal Year Research-status Report
The Political Economy of Global Standards on Developmental Finance
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18KK0037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 基史 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (00278780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 敬輔 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00316895)
宇治 梓紗 京都大学, 公共政策連携研究部, 特別研究員(PD) (00829591)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 国際政治経済学 / 国際関係論 / 国際制度 / 開発金融 / 計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、開発金融に関わるグローバル・スタンダード(標準)の相克と収斂の原因およびその影響について分析することを目的としている。具体的には、複数の開発金融標準が併存する状況に着目し、それらの相克の過程と収斂の可能性を解明しつつ、国際関係学における標準理論の発展に貢献することを目指している。さらに、複数の標準が競合する状況では、欧米型の標準が重視する経済福祉、人権保障、環境保護、通貨安定にどのような影響が及ぶのかについて検証し、標準に関わる包括的な研究を視野に入れている。 本研究の初年度の実績として、開発金融と経済および経済成長に不可欠な貿易に関する膨大な量的データを収集・整理した。そのデータをもとに、プレリミナリーな解析を本研究の分析枠組みに従って行った。鈴木と宇治がその結果をまとめて、共著の英語論文を作成し、2019年2月にザルツブルグ大学で開催された国際機関政治経済研究会(PEIO)において同論文を発表した。さらに、PEIOの討論者のコメントをもとに同論文を加筆・修正し、2019年3月にトロント市において開催された世界国際関係学会(ISA)において同論文を発表した。 鈴木は、アジア・マクロ経済監視機構に関する英語論文を作成し、国際共同研究者のグライムズ教授がボストン大学で主宰した国際ワークショップ(2019年3月1日)に寄稿した。残念ながら本務校の公務のため同ワークショップに出席できなかったものの、論文は提出した。宇治は、途上国に対する融資を取り入れた、有害物質の水銀の生産・排出を規制する水俣条約の成立について英語論文を仕上げ、査読付き国際学術誌に寄稿した。同論文は、環境保護も視野に入れた開発金融の多様化を示した。また、宇治は、スイス工科大学(ETH)のバーナー教授らからサーベイ実験について国際共同研究を進め、予備調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度に行う予定であったデータの収集整理を完了した。本研究計画の分析枠組みを適用して、同データを解析し、プレリミナリーの英語論文としてまとめた。同論文を、上記の2つの国際学会において発表した。同データは、次年度以降に予定されている開発金融と環境・人権問題の連関の分析にも適用可能な膨大かつ汎用性の高いものである。 宇治は、資金援助を取り入れた、水銀の生産・排出を規制する水俣条約の成立について英語論文を仕上げ、査読付き国際学術誌「International Environmental Agreements: Politics, Law and Economics」に寄稿した。 また、本研究の国際共同研究者であるボストン大学のグライムズ教授とセリン准教授、東京大学の飯田教授とISAの開催期間中にトロント市で会合し、進捗状況について意見交換し、今後の共同研究について打ち合わせを行った。また、中国の開発金融政策と東欧諸国の対応について、2018年11月28日にロンドン大学キングス校のラモン・パンチェコ教授から聞き取り調査を行い、今後、意見交換を行っていくことで合意した。その翌日、同校において鈴木は日本と中国の開発金融政策の競合と協調について講演を行った。これらの観点から判断すると、本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、前年度に作成し、PEIOおよびISAという国際学会で発表した英語論文の分析を精緻化し、その結果を加えて同論文を加筆・修正した後、国際的な学術誌に投稿する予定である。一方で、同論文の作成に当たり収集・整理した膨大な量的データを用いて、開発金融が被融資国の貧困・成長・環境・人権問題にどの程度の配慮をしているかどうかについての解析を始める。その中で、国際制度間の連携についても分析を進める。昨年度に作成した英語論文では開発金融制度と貿易制度の連携を手掛けたが、それを一層発展させて、環境・人権制度との連携をも分析の射程に入れる。また、2019年6月下旬には、本研究の国際共同研究者であるボストン大学のグライムズ教授らを招聘して、国際ワークショップを京都大学で開催する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の採択の発表時期が遅く、当該年度の研究期間は極めて限られていた。そのうえ、本務校の定期試験採点、入試業務、学位論文審査などが重なり、予算をすべて消化することは困難であった。しかしながら、研究組織の代表者と分担者の懸命な努力により、研究計画で予定されていた研究計画を実施に移して、前述した研究実績を上げることができた。2019年度への繰越金は、2019年6月下旬に京都大学において開催する国際ワークショップの運営および招聘研究者の旅費・宿泊費に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)