2020 Fiscal Year Research-status Report
An International Comparative Study of Governance in Representative Democracy
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18KK0039
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 良彰 慶應義塾大学, 法学部(三田), 名誉教授 (40153655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 健 同志社大学, 法学部, 教授 (50468873)
鎌原 勇太 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (70710268)
築山 宏樹 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (60800480)
原田 勝孝 福岡大学, 経済学部, 准教授 (30738810)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | 政治学 / NPC / NFP |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は米国シカゴ大学FAUIプロジェクトが行った調査と比較するために令和元年度に日本の自治体関係者に対して実施して回収したFAUI調査データの分析を行った。具体的には、政治文化の変化(NPC)に着目して、従来の政治的対立軸とは異なる新しい軸を設定し、両者の軸を組み合わせることで自治体の首長をA:伝統的保守主義、B:伝統的リベラリズム、C:NFP(New Fiscal Populist)、D:クライエンタリズムの4つのタイプに分類した。その結果、A:伝統的保守主義市長が15.2%、B:伝統的リベラリズム市長が25.2%、C:NFP市長が48.5%、、D:クライエンタリズム市長が11.0%であった。これを研究代表者が2001年に実施した同様の調査と比較すると、A:伝統的保守主義市長が24.3%減少、B:伝統的リベラリズム市長が18.2%減少する一方で、C:NFP市長が21.0%増加しており、イデオロギー軸による対立構造が薄れていることが明らかになった。また、D:クライエンタリズム市長は6.2%減少している。 さらに、各自治体の社会経済的地域特性がどのようなNPCタイプの首長の選出に繋がるのかを分析した結果、NFPタイプの首長は一人当たり課税対象所得額が高い自治体や第1次産業人口比率が低い自治体で誕生していることが明らかになった。また、市長のNPCタイプによって、自治体行政にどのような影響があるのかを分析した結果、財政力指数や経常収支比率は伝統的保守市長で最も高い一方で、住民に対する情報公開やアンケート調査、予算編成における地区懇談会や市民集会、各種団体との懇談会など住民のニーズを吸収することに積極的なのはNFP市長であることが明らかになった。そして、NFPタイプの首長の自治体では人口増加率だけでなく人口自然増加率に対してもプラスの効果をもたらしていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では「政策エリートが市民に提示する公約を市民が選択することで政治家に民意を負託し、選出された政治家が議会で 議論した結果として形成される政策に対する市民の評価が次の政治家選出に繋がる」という代議制民主主義がどのように機能しているのかを実証的に分析するため、米国シカゴ大学FAUIプロジェクトと韓国ソウル国立大学行政学大学院(GSPA)の二つの海外拠点と共同研究を行っている。現在までに、当初計画通りに、日本の全ての市及び特別区の首長・議長・財政課長を対象とするFAUI調査を実施して、高い回収率を得た。このデータに基づいて分析を行ない、米国や韓国との国際比較だけなく、地方分権一括法施行時の同様の調査と比較することで、地方分権一括法が首長の政治文化の変容をもたらし、さらに自治体の施策の変化を通して住民に寄与していることを実証的に明らかにしている。こうした研究成果に基づいて、研究代表者は国際共著論文を米国ラトガース大学が編集し、Springerが刊行する国際学術誌に投稿して採択され、査読付論文として掲載予定である。 また、当初計画を超えて、上記研究によるデータを利用してFAUIから派生した研究も多く、若手研究分担者の一人は、議員定数不均衡の生成過程(MGP)と時間的変化を考慮に入れた新たな概念や分析方法を数学的に定式化し、新たな指標であるα-divergenceを導入した上で112か国440選挙というパネルデータによる論文をElsevierが刊行するElectoral Studiesに投稿して採択され、査読付論文として掲載予定である。さらに、別の若手研究分担者は、微視的な町丁目単位のデータを用いて過年度の災害が人的資本の蓄積に対して現在でも負の影響を与えていることを明らかにし、国際学術誌に投稿して条件付き採択となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究課題では、当初計画を超えてFAUI研究の成果であるNPC首長のタイプが市民のWell-Beingにどのような効果をもたらすのかを実証的に明らかにする。このため市民のWell-Beingを五つの次元(safety and security、health、wealth、convenience、amenity)に分けて各々の次元をもたらす社会経済的要因を抽出して関連性を解明するとともに、五つの次元の間にどのような因果関係が存在するのかを計量的に分析する。これらの作業を通して、従来のFAUI研究とAmenity研究を融合して、新たなWell-Being研究にパラダイムシフトすることを目指す。そして、研究代表者及び研究分担者はWell-Beingの研究成果を米国ラトガース大学が編集してSpringerが刊行する学術誌International Journal of Community Well-Being等に投稿する。さらに、コロナ感染拡大による渡航規制が収束するまでの間、シカゴ大学とはオンラインで常時、協議を続けると共に、韓国選挙学会及び台湾国立政治大学とのアジア選挙研究国際シンポジウム(AES)を令和3年10月23日に開催する。また、韓国ソウル大学行政学大学院との合同シンポジウムを令和4年2月に開催する(渡航規制が解除された場合には、対面開催)。この他、当初計画を超えて、韓国延世大学行政学大学院からの申し出により、令和3年6月に共同で国際シンポジウムをオンラインで開催することが決まっている。これらを通して、研究代表者がこれまで培ってきた米国や韓国、台湾の研究者とのネットワークに日本の若手研究者を組み入れ、彼らが共同研究を通して国際共著論文を刊行することをもう一人のメンターと共に指導していく。
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Causes of Carryover |
令和2年度8月に予定されていた米国シカゴ大学や韓国ソウル大学での共同研究、米国政治学会年次大会やアジア選挙研究シンポジウムでの研究報告などがコロナ感染拡大に伴う渡航規制により渡航できなくなったことや学会大会やシンポジウム自体が開催中止になったことにより旅費が支出できなくなった。令和3年度はコロナ感染収束による渡航規制が緩和され次第、米国シカゴ大学や韓国ソウル大学での共同研究に参加するとともに、海外での学会や国際シンポジウムに可能な限り出席して報告する計画である。
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Research Products
(26 results)
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[Book] 都市科学事典2021
Author(s)
鎌原勇太、横浜国立大学都市科学部編
Total Pages
1052
Publisher
春風社
ISBN
9784861107344
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