2021 Fiscal Year Research-status Report
An International Comparative Study of Governance in Representative Democracy
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18KK0039
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 良彰 慶應義塾大学, 法学部(三田), 名誉教授 (40153655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 健 同志社大学, 法学部, 教授 (50468873)
鎌原 勇太 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (70710268)
築山 宏樹 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (60800480)
原田 勝孝 福岡大学, 経済学部, 准教授 (30738810)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | 代議制民主主義 / FAUI / Well-Being |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、本研究課題で実施した自治体関係者に対する調査データを用いて、当初計画を超えてFAUI研究の成果であるNPC首長のタイプが市民のWell-Beingにどのような効果をもたらすのかを実証的に明らかにした。具体的には、Well-Beingを五つの次元(safety and security、health、wealth、convenience、amenity)に分けて各々の次元をもたらす社会経済的要因を抽出して関連性を解明した。これらの作業を通して従来のFAUI研究とAmenity研究を融合して、新たなWell-Being研究にパラダイムシフトすることを目指した。これら研究代表者及び研究分担者の研究成果をSpringerが刊行する国際学術誌等に投稿し、研究代表者による国際共著論文や研究分担者による論文が査読付論文として刊行された。さらに、シカゴ大学のClark教授を交えた国際カンファレンスを共同開催し、研究代表者及び研究分担者の全員が報告して活発な討議を行なった。またソウル大学行政学大学院(GSPA)のIm教授やKim教授(韓国地方分権委員会委員長)達と国際カンファレンスを共同開催し、本研究課題側とGSPA側の双方から多くの報告を行ない、自治体ガバナンスの比較について熱心な議論を交わした。さらに、韓国選挙学会及び台湾国立政治大学とのアジア選挙研究国際シンポジウム(AES)を共同開催するとともに、当初計画を超えて延世大学行政学大学院と国際シンポジウムを共同開催して、双方の研究者による報告と質疑応答を行なった。これらを通して、研究代表者がこれまで培ってきた米国や韓国、台湾の研究者とのネットワークに日本の若手研究者を組み入れ、彼らが査読付き国際学術誌掲載論文を刊行することをもう一人のメンターである飯田と共に指導し、当初計画を超える成果を挙げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高い回収率を得た日本の全ての市及び特別区の首長・議長・財政課長を対象とするFAUI調査データに基づいて分析を行ない、米国や韓国との国際比較だけなく、地方分権一括法施行時の日本での同様の調査と比較することで、地方分権一括法が首長の政治文化の変容をもたらし、さらに自治体の施策の変化を通して住民に寄与していることを実証的に明らかにした。また先進施策の要因と効果について自治体関係者へのヒアリングを実施した。これらの結果、研究代表者による国際共著論文がSpringerが刊行する国際学術誌に査読付論文として掲載されたことをはじめ、研究分担者全員が国際学術誌に査読付論文が掲載されている。具体的には、飯田はInternational Journal of Public Opinion Researchに掲載され、若手研究代表者の鎌原は議員定数不均衡の新たな指標(α-divergence)を導入した上で112か国440選挙のパネルデータによる論文をElsevierが刊行するElectoral Studiesに掲載されている。さらに、別の若手研究分担者の原田は、微視的データを用いて過年度の災害が人的資本の蓄積に対して負の影響を与えていることを明らかにし、国際学術誌に査読付掲載となっている。そして、若手研究分担者の築山も自治体ガバナンスについての論文が国際学術誌に査読付掲載になった。また、研究協力者である中谷もInternational Political Science Review(IPSR)に査読付論文が掲載された。なお、①シカゴ大学、②韓国地方分権委員会委員長のKim教授をはじめとするソウル大学行政学大学院、③韓国選挙学会及び台湾国立政治大学との国際シンポジウムを各々、共同開催した。さらに、当初計画を超えて、④延世大学行政学大学院との国際シンポジウムを令和3年6月26日に開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は当初計画を超えて下記の研究を進める。①FAUI研究について、日本の自治体首長選挙のデータに自治体の財政データを組み合わせた非連続回帰デザインから現職政治家の再選が財政支出の効率性に与える影響を分析する。②FAUIによるマクロ分析の結果に基づいて、各自治体のケーススタディを行なう。具体的には、NFP首長自治体の内、民間事業の公営企業化や他自治体の模範となるコロナ感染対策など先進的施策を実施している自治体のステークホルダーにヒアリングを行い、ミクロな分析を行なう。③国政レベルの代表民主制における野党支持の要因に関する研究を行う。具体的には、2021年の衆院選で従来、地域政党と考えられていた日本維新の会が立憲民主党の票を奪う形で躍進したことにより、政策的・イデオロギー的に立場の異なる野党が相互に代替可能であるという政治学的なパズルが顕在化した。このパズルに答えるために、FAUI研究の中核を成す緊縮財政主義に関する有権者の意識に着目した仮説を立て、実験を行う。④シカゴ大学Clark教授とFAUIについての共同研究を行なってきたが、さらに同教授が主催するAmenity研究やSean研究に参加し、都市空間におけるAmenityの変化を定化し、民族分裂化度(Fractionalization)指標との関連を明らかにする。また、政治的Amenityとしてmalapportionment指標を定量化し、従来の「全人口」、「有権者」、「投票者」に加えて国民需要を指標とする適正な定数配分を試算する。⑤Amenityを表す指標として地縁に基づいたソーシャル・キャピタルを定量化し、政治参加に与える長期的影響を調べるため、選挙日の携帯電話の移動情報から投票率を推定する手法を開発して分析する。⑥Im教授をはじめとするソウル大学行政学大学院との国際シンポジウムを共同開催する。
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Causes of Carryover |
令和3年度において米国シカゴ大学や韓国ソウル大学での共同研究、米国政治学会年次大会やアジア選挙研究シンポジウムの研究報告などがコロナ感染に伴う渡航制限のためにオンライン開催となり、その分の旅費を支出できなくなった。令和4年度はコロナ感染収束による渡航制限が緩和され次第、米国シカゴ大学や韓国ソウル大学での共同研究に参加すると共に、学会や国際シンポジウムに積極的に出席して報告する計画である。
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Research Products
(69 results)