2020 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of location, magnitude, and mode of the impact of a small solar system body in Southeast Asia at ca. 0.8 Ma and its effect on the surrounding environment
Project/Area Number |
18KK0092
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
多田 隆治 千葉工業大学, 地球学研究センター, 嘱託主席研究員 (30143366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田近 英一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70251410)
岡田 誠 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (00250978)
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (80616433)
鹿山 雅裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30634068)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 小天体衝突 / イジェクタ / オーストラリア-アジア・テクタイト・イベント / 層状テクタイト / マイクロテクタイト / 日本海 / 千葉セクション |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、5月末にJpGUでの国際セッションをオンラインで行った。それに合わせて国際ワークショップを行う予定だったが、Covid-19感染拡大の影響で中止した。インドシナ半島南部広域調査で残されていたベトナム南部の調査、千葉セクションにおける試料採取は2021年度へ再延期した。千葉セクションにおける試料採取の代わりに、以前銚子で掘削されたコア試料のオーストラリア-アジア・テクタイト・イベント(AATE)対応層序区間の試料採取を10月に茨城大で行った。また、コロナ禍でも実施可能な研究として、これまでに採取されたイジェクタ試料の観察・分析を行った。先ず、イジェクタ層中の層状テクタイト片濃集部から回収したテクタイト片の観察と、破砕前の層状テクタイト塊の復元を行った。その結果、回収された層状テクタイト片は、元々総重量で1 kg近い、筒状に丸まった層状テクタイトが、ユニット2堆積直後に着弾し、ユニット2上部にめり込みながら破砕したものである事が明らかになった。この成果は、既にPEPS誌に公表し、2021年5月のJpGU年会においても発表予定である。次に、これまでに採取したイジェクタ層の特にユニット2(イジェクタ・ブランケット堆積物と推定される)中の礫種の鑑定を行った。その結果、ラオス南部のイジェクタ層中の礫に、著しく風化した玄武岩礫が多く含まれる事が明らかになった。この結果は衝突ターゲットに玄武岩が含まれることを示唆する点で重要であり、5月のJpGUで発表予定である。また、日本海堆積物中のAATE起源マイクロテクタイトの形状・色観察、個数密度測定、粒度測定を行った。日本海堆積物中のマイクロテクタイトには、黄色透明でやや大きく幅広い粒度分布を示すものと、暗灰色半透明~不透明で細粒で狭い分布を示すものの2種類あることが明らかになった。この結果は、2020年度のJpGUで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Covid-19感染拡大で、海外研究者の招聘や海外渡航が出来ない状態が2020年度を通じて継続したため、千葉工大で開催予定だった国際ワークショップは中止に、秋に予定していたベトナム調査は再延期せざるを得なかった。国内調査も翌年度に再延期した。 2020年度には、この状況下で実行可能な以下の事を行った。①JpGUオンライン国際セッションにおける成果発表。②千葉セクションの代用として銚子で掘削されたコア試料の試料採取。③これまでにインドシナ半島東部で採取したイジェクタ試料の観察・分析による衝撃変成石英やテクタイトなど衝突起源物質の更なる探索と記載。④インドシナ半島東部で観察・記載したイジェクタ層の層序データまとめと、イジェクタ層層厚分布図の作成。⑤イジェクタ層の特にユニット2中の礫種の記載・鑑定に基づく、衝突ターゲット岩石の推定。⑥日本海堆積物中のAATE起源マイクロテクタイトの形状・色観察、個数密度測定、粒度測定。 ③の作業から、ユニット2がイジェクタ・ブランケット堆積物である可能性がより強く示唆され、④から、特にユニット2の層厚がボラヴェン高原西部に向かって厚くなり、そこが衝突地点である可能性が高いことが、⑤から、ターゲット岩石は、砂岩と玄武岩からなり、白色珪岩を主とした河川礫を含む可能性が高いことが、明らかになった。これらの結果は、ボラヴェン高原西部の玄武岩溶岩の下にクレーターがあるとするSieh et al. (2019)の仮説を支持する。また⑥から、日本海堆積物中のマイクロテクタイトには、黄色透明でやや大きく広い粒度分布を示すものと、暗灰色半透明~不透明、細粒で狭い粒度分布を示すものの2種類があり、後者は、衝突で大気中に広がった高温蒸気から凝集した可能性があると示唆された。 この様に、当初計画の大部分は2021年度に延期となり計画は大幅に遅れたが、研究目的達成には近づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査結果に基づくイジェクタ層ユニット2の層厚分布から、衝突地点がボラヴェン高原西部にほぼ特定された。しかし、衝突推定地点南東側ベトナム南部のデータが欠如しているため、このままでは衝突地点や衝突規模推定の信頼度が低い。この問題を解決するためには、ベトナム南部の調査が不可欠である。また可能なら、ラオス南東部についても、データを加えたい。そこで、Covid-19の感染がある程度収まると期待される2021年11月~2022年1月に2~3週間程度のベトナム南部、ラオス南東部調査を予定している。この調査により、イジェクタ層の層厚、粒度や粒子組成の地理的分布の異方性を明らかにし、衝突地点をより厳密に特定すると共に、衝突様式や衝突規模の推定が可能になると期待される。 また、これまでに採取した基盤岩試料中の石英について、放射光XRDやESR、結晶化度分析を更に進め、衝突地点周辺において、衝突に伴って基盤岩が受けた温度や圧力の推定も進める予定である。更に、衝突のターゲット岩石が多孔質な砂岩の場合、形成される衝撃変成石英の衝撃変成ラメラ(PDF)が、ターゲット岩石が結晶質岩石の場合と異なる特徴を持つ可能性があることが判ってきた。そこで、多孔質砂岩を用いた衝突実験を行い、形成される衝撃変成石英のPDFを観察・記載してこの可能性を検証する予定である。 また、5月~6月に千葉セクションで試料採取を行い、マイクロテクタイトの大きさ、組成、フラックスを推定し、日本海堆積物の結果と併せて、マイクロテクタイトの分布や飛散過程について、制約を与える。 これらの結果をまとめ、AATEの衝突地点、衝突規模、衝突様式、ターゲット岩石などを明らかにし、AATEの総合的理解を進めるために、2022年2~3月に、タイかベトナムで国際シンポジウムと現地討論会を開催し、その成果を、国際誌の特集号としてまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
2020年度においては、Covid-19感染拡大の影響で海外渡航がほぼ不可能であったため、予定していた国際シンポジウムは中止に、ベトナム調査は2021年度に延期にせざるを得なかった。また、緊急事態宣言発令の繰り返しにより、千葉セクション試料採取も日程調整がうまくいかず、2021年度に延期とした。2020年度の計画の大部分を占めた国際シンポジウムの中止や、ベトナム調査、千葉セクション試料採取の延期のため、2020年度予算の大部分を2021年度に繰り越す事となった。 2021年度は最終年度であるが、これまでの研究結果から推定される衝突地点の南東方に当たるベトナム南部のイジェクタ層の粒度や層厚、構成粒子組成のデータがないと、衝突地点、衝突規模、衝突様式、ターゲット岩石の推定の精度が低くなり、成果の一流国際誌への投稿が難しくなる。その為、ベトナム調査はどうしても行う必要がある。そこで、Covid-19感染の終息が期待される2021年度秋~冬に、2週間程度のベトナム調査を行う予定である。そして、その成果を急いでまとめ、年度の終わりにタイかベトナムで、最終成果取りまとめの為の国際シンポジウムと現地討論会を開催する予定である。また、夏に千葉セクションにおける試料採取を行い、AATE起源のマイクロテクタイトの発見を目指す。また、採取した試料の各種分析にも予算を振り分ける必要がある。
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[Presentation] Regionally-extensive ejecta layer of the Australian tektite strewn-field: the MIS 20 large meteorite impact in Indochina2020
Author(s)
Paul A. Carling, Toshihiro Tada, Ryuji Tada, Wickanet Songtham, Alan Cresswell, David Sanderson, Naomi Porat, Jaroon Duangkrayom, Luba Meshkova, Ian Croudace, Stephen Darby, Xuanmei Fan
Organizer
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
Int'l Joint Research
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