2022 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of location, magnitude, and mode of the impact of a small solar system body in Southeast Asia at ca. 0.8 Ma and its effect on the surrounding environment
Project/Area Number |
18KK0092
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
多田 隆治 千葉工業大学, 地球学研究センター, 嘱託主席研究員 (30143366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田近 英一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70251410)
岡田 誠 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (00250978)
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (80616433)
鹿山 雅裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30634068)
多田 賢弘 千葉工業大学, 地球学研究センター, 研究員 (80909565)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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Keywords | オーストラリア-アジア・テクタイト・イベント / 小天体衝突 / イジェクタ / 衝撃変成石英 / インドシナ半島 / ボラベン高原 / マイクロテクタイト / 日本海 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、日本海IODP U1426地点におけるオーストラリアーアジア・マイクロテクタイトのフラックスと粒度分布について詳しく調べ、フラックスは1平方㎝あたり690個、平均粒径は57μmで、従来報告されているものよりかなり小さい粒子が、これまでmicrotektiteは分布していないとされていたか日本海において、かなり大量に降下していることが明らかになった。一方、インドシナ半島おけるイジェクタ層の認定に関する論文が、Meteoritics & Planetary Sciences誌に受理され、古くから地元でlaterite層と呼ばれていた鉄酸化物・水酸化物にとんだ赤茶色の層が、オーストラリアーアジア・テクタイト(AAT)を生み出した小天体衝突起源のイジェクタ層であることを世界で初めて明らかにした。 イジェクタ層の層厚分布は、衝突地点の位置や衝突規模の推定に極めて有効である。我々は、2019年までにタイ東北部、ラオス南西部、カンボジア北部の調査を行ってきたが、その後のコロナ禍のため、2020、2021年度は海外調査が出来ずにいた。2022年度の後半になって、ベトナム、タイ、ラオスなどへの入国制限が緩和され、調査の再開が可能になった。そこで、2022年12月に10日ほどベトナム南部の調査を行い、2地点でイジェクタ層を確認し、その層厚、組成、粒度を調べた。また、2023年2月には、タイ東北部およびラオス南部について約2週間かけて、ボラベン高原衝突説を唱えるシンガポール地球観測研究所のSieh教授、共同研究者のCarling教授、ナコンラチャシマラジャハット大学のSongtham博士、Duangkrayom博士らと共に野外での討論および共同調査を行い、ラオス南東部におけるイジェクタ層の分布を確認し、その層厚、組成、粒度を調べた。なお、現地討論にはNHKの撮影チームも同行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度に行ったベトナム南部およびラオス島南部調査によって、②イジェクタ堆積物の層厚・粒度・粒子組成の定量のための調査・試料採取地点は、ベトナム北部を除く研究対象域全域を網羅し、一応目的達成の目処がついた。また、①基盤岩中の衝撃変成石英有無とその量の推定、③石英の電子スピン共鳴(ESR)、カソードルミネッセンスによる基盤岩温度・圧力履歴の推定、を行うための試料もほぼ採取が完了し、あとは2022年度に採取した試料の薄片観察、分析を行うだけである。また、④イジェクタ層中の炭化木の燃焼温度は、Ban Tha Changにおいて推定を行った結果、通常の山火事と変わらなかった。 千葉セクションにおけるオーストラリアーアジア・テクタイト・イベント(AATE)層準の認定については、該当層準の試料採取・分析を試みたが、microtektiteを発見できなかった。そのため、microtektite層準をまたぐ層序区間で浮遊性有孔虫殻を取り出し、その炭素同位体比、酸素同位体比、Mg/Ca比を測定して、(a)森林燃焼による大気へのCO2放出量、(b)CO2放出に伴う海水温上昇の程度及び持続期間を推定するという当初の目的は達成できなくなった。そこで、代替え地点を検討している。 小天体衝突の数値シミュレーションについては、シミュレーションのための制約条件が十分でないため、まだ行うに至っていない。そこで、制約条件をより明確にするため、衝突地点での圧力や温度の推定を目的として衝突実験を行い、生成された衝撃変成石英の特徴と衝突時の温度圧力の対応関係の検討を行っている。 衝突に伴う環境擾乱とその生物への影響については、最近、Duangkrayom博士がタイ東北部でイジェクタ層に伴う大型動物化石産出地点を発見したので、その予察調査を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の主目的の一つであるインドシナ半島陸域におけるAATE起源イジェクタ層の認定は既に完了し、更にイジェクタ層を3つの層序ユニットに細分して、各ユニットの運搬・堆積機構を明らかにした。その結果は、2本の論文として既に国際誌に発表した。こうした結果をもとに、既にインドシナ半島内の36地点において、イジェクタ層を確認し、特にイジェクタカーテン堆積物に対応するユニット2について、その層厚を測定し、粒度と粒子の種類・量比についても測定を進めている。基盤岩についても、特に中生代の石英質砂岩に的を絞って試料の採取を行っており、既にインドシナ半島内の57地点において試料を採取し、放射光XRDを用いた石英の格子間隔測定に基づく圧力の推定、ESR信号強度に基づく温度の推定を進めている。最終年度である2023年度は、昨年度に採取した試料の観察、分析を行い、その結果をまとめる予定である。 AATE層準をまたぐ層序区間で浮遊性有孔虫殻を取り出し、その炭素同位体比、酸素同位体比、Mg/Ca比を測定して、(a)森林燃焼による大気へのCO2放出量、(b)CO2放出に伴う海水温上昇の程度及び持続期間を推定するという目的達成のため、東大池田昌之」准教授と共同で、千葉セクションに代わって、最近AATE microtektiteが発見された南シナ海北部IODP U1146 地点のコア試料を請求し、試料請求申請は受理された。近日中に高知コアセンターにサブサンプリングに行く予定である。試料入手次第、予定した分析をできる限り行い、目的(a), (b)を達成したい。 衝突の数値シミュレーションについては、当初考えていたより難しいことがわかってきたが、本プロジェクトでの調査、分析結果、衝突実験結果などをもとに、シミュレーションの境界条件を詰め、次の段階でシミュレーションが行えるところまで持ってゆきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、2020, 2021年度は、予定していた海外調査を行うことができなかったが、2022年度の後半(10月頃)になって、ベトナム、タイ、ラオスへの野外調査のための渡航が可能になった。そこで、まず12月に、ベトナム南部においてイジェクタ層の分布、層厚、粒度、粒子組成の調査を10日間行い、2023年2月には、タイ東北部およびラオス南部においてSouthampton大のCarling教授、Nakhon Ratchasima Rajabhat大のDuangkrayom講師、Nanyang工科大のSieh教授らとの合同調査を2週間行った。これらの調査は準備期間が短かったため、現地でのホテルやレンタカーの手配は困難を極め、経費の見積もりも難しかった。最も経費がかかった場合を想定して予算を組んだが、幸い約100万円低い経費で調査を完了できた。 調査で採取した試料が届いたのは3月になってからで、年度内に試料の観察、分析を行ない成果をまとめることは無理であった。大学の事務方からの助言もあり、もう一年繰り越して試料の分析等に使用したほうが良いと判断し、繰り越しを決めた。また、4月に入って、タイの共同研究者から、新たに衝突の生物への影響を知るうえで重要な露頭が発見されたとの連絡が入ったので、そこへ行き、観察記載を行うことも考えている。
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[Journal Article] Experimentally shock-induced melt veins in basalt: Improving the shock classification of eucrites2023
Author(s)
Ono, H., K. Kurosawa*, T. Niihara, T. Mikouchi, N. Tomioka, J. Isa, H. Kagi, T. Matsuzaki, H. Sakuma, H. Genda, T. Sakaiya, T. Kondo, M. Kayama, M. Koike, Y. Sano, M.
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Journal Title
Geophysical Research Letters
Volume: 50
Pages: e2022GL101009
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Effect of projectile shape and interior structure on crater size in strength regime2022
Author(s)
T. Kadono, M. Arakawa, S. Tsujido, M. Yasui, S. Hasegawa, K. Kurosawa, K. Shirai, C. Okamoto, K. Ogawa, Y. Iijima, Y. Shimaki, K. Wada
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Journal Title
Earth, Planets and Space
Volume: 74
Pages: 132
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 減衰衝撃波を用いた衝撃回収実験: 大理石, 花崗岩, 玄武岩の衝撃変成2022
Author(s)
黒澤耕介, 大野遼, Christopher Hamann, 多田賢弘, 新原隆史, 三河内岳, 富岡尚敬, 境家達弘, 近藤忠, Felix Kaufmann, 鍵裕之, 玄田英典, 松崎琢也, 鹿山雅裕, 小池みずほ, 佐野有司, 村山雅史, 佐竹渉, 岡本尚也, 松井孝典
Organizer
日本地球惑星科学連合大会
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