2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of Cooperative Chemo- and Biocatalysts and their Application in the Practical Synthesis of Biologically Active Molecules
Project/Area Number |
18KK0154
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笹井 宏明 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (90205831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 健 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (10816846)
井川 貴詞 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (20453061)
佐古 真 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20804090)
赤井 周司 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (60192457)
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | バナジウム / oxa-Piancatelli反応 / 不斉触媒 / 動的速度論的光学分割 / 酵素 / ビフェニル / フロー合成 / 酸化カップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本国際共同研究では、バナジウム/酵素複合触媒反応の開発に実績のある赤井周司(大阪大学大学院薬学研究科)、キラルバナジウム触媒の設計・開発に多くの実績がある笹井宏明(大阪大学産業科学研究所)、天然酵素の改変技術や酵素・菌体を用いる物質変換・物質生産に実績のあるHarald Gröger (ドイツBielefeld 大学化学科)の3つの研究室が各々得意とする分野で課題を解決し、バナジウムと酵素の特性・利点を融合した既存の触媒では促進できない革新的なバナジウム触媒反応プロセスの創出を目指した。本年度は、以下の2つの課題を中心に共同研究を実施した。 課題1: バナジウム/酵素複合触媒による第二級プロパルギルアルコールの動的速度論的光学分割の実現 課題2: エナンチオ選択的炭素-炭素結合形成反応を促進するバナジウム触媒の創製と応用 両課題とも、大阪大学とBielefeld 大学で分担して行い、また、電子メールやSkype等で頻繁に情報共有と討論を行い、研究を進めた。本年度の共同研究成果は、「Chiral Dinuclear Vanadium Complex-Mediated Oxidative Coupling of Resorcinols」として2018年12月にThe Journal of Organic Chemistry誌の84巻3号(雑誌表紙に選定)に、「Lipase/Oxovanadium Co-Catalyzed Dynamic Kinetic Resolution of Propargyl Alcohols: Competition between Racemization and Rearrangement」として2019年3月にOrganic Letter誌の 21巻9号に発表した。現在、oxa-Piancatelli反応開発の共著論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学的に純粋な第二級プロパルギルアルコールは、医薬品等の部分構造として、また、合成中間体として重要である。しかしながら、酵素触媒動的光学分割を第二級プロパルギルアルコールに適用した場合、Meyer-Schuster転位によりエナール誘導体も生じるため化学収率は激減する。本共同研究では、ごく最近開発した数種の固定化バナジウム触媒をトリフルオロメチルベンゼン溶媒中で取り扱うことでMeyer-Schuster転位を抑え、目的のキラルな第二級プロパルギルアルコールを最高99%収率・99% eeにて得ることに成功した。 有用な医薬資源の中には、ビフェニル骨格を有する化合物が多い。しかしながら、これら骨格の構築には高い反応エネルギーを必要とし、目的以外の副反応の進行により副生成物を与えることも多々ある。環境に低負荷なこれら骨格の構築法の開拓は、化学系薬学分野においても挑戦的課題の一つとなっている。今回の共同研究では、空気中の酸素を再酸化剤に使用することで副生成物は水のみのエナンチオ選択的なビフェニル骨格構築法の開発に成功した。本共同研究の成果は、それぞれ「Chiral Dinuclear Vanadium Complex-Mediated Oxidative Coupling of Resorcinols」及び、「Lipase/Oxovanadium Co-Catalyzed Dynamic Kinetic Resolution of Propargyl Alcohols: Competition between Racemization and Rearrangement」として2018年12月及び、2019年3月にThe Journal of Organic Chemistry誌及び、Organic Letter誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで一般的な有機合成に汎用されてきたフラスコ等の容器で反応を行う方法に代わり、反応管に基質溶液を送液する連続フロー合成が最近注目されている。今後は、フロー合成研究に実績があるGröger教授・笹井と共に、まずは赤井らの固定化バナジウム/酵素複合触媒を用いる動的光学分割法をフロー合成に適用する検討を行い、特に第三級アルコーやヘリセン類の動的光学分割の実用化を目指す。 さらに、数名の大阪大学の大学院生がBielefeld 大学を訪問し、また、Bielefeld 大学の数名の大学院生が大阪大学に来て、相手方研究室に滞在して実験と討論を行う。それぞれの滞在期間に、互いの実験技術や研究成果を密に相互交換する。まずは2019年5月~7月の3ヶ月間、笹井研究室の花谷優太郎(大阪大学大学院生)がBielefeld 大学に滞在、実験・討論、研究成果を発表する。また、2019年7月に笹井が、12月に赤井研究室及び、笹井研究室の若手教員・大学院生を中心にBielefeld 大学を訪問し、Gröger教授、並びにGröger研究室の学生と共同研究の進捗状況について直接情報交換するとともに、2020年度以降の具体的な研究計画についてセミナー形式で討論する予定である。 これまでGröger教授と社会の発展・維持を指向した有機合成化学分野における省エネルギーかつ環境調和型バナジウム反応プロセスの開発を進めていく中で、ドイツ国内の大学・研究所の本研究プログラム関連分野の先生方と交流する機会を得ている。今後、Gröger教授が生物の代謝工学に基づく化成品合成の共同研究を精力的に進めている大阪大学大学院工学研究科准教授本田孝祐准教授とも連携して研究を展開していく予定である。
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