2019 Fiscal Year Research-status Report
International research network for the improvement of direct-seeded rice systems in stress-prone environments in tropical Asia
Project/Area Number |
18KK0169
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 大賢 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70710945)
深野 祐也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70713535)
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
直播水稲に関する作物栽培研究分野では、カンボジアで行ってきた直播水稲の施肥管理の改善策に関して試験結果を、現地研究者と共に論文に取りまとめた。また、フィリピン干ばつ地帯向けに進めてきた乾燥耐性水稲新品種の農民参加型普及調査研究についても現地研究者と共に論文に取りまとめた。また、大学院生1名を国際稲研究所に長期派遣し、干ばつ常襲地帯を対象とした乾田直播水稲栽培に関する生理生態研究、および農民の栽培暦の意思決定に関する調査研究を行った。一方、直播水稲体系における耕地利用率および年産作物生産量向上を狙った研究も展開、大学院生1名をフィリピン稲研究所に長期派遣した。ルソン島北西部パンガシナン州におけるイネ-トウモロコシ多毛作体系の実態把握を目的に、3村60戸の農家を対象として聞き取り調査を実施した。加えて、トウモロコシ栽培の省力化と収益性改善を目的とした簡易播種機導入の効果と課題を明らかにするため、現地農家圃場においてフィリピン稲研究所ならびにフィリピン大学と共同で栽培試験を実施した。これらの現地調査から得られた結果に基づき、現在、トウモロコシの収益性向上に向けた栽培条件の検討を進めている。またイネ遺伝育種について、インド型水稲品種IR64は、少なくとも2つのトビイロウンカ抵抗性遺伝子BPH1とBPH38を保有することが知られており、そのIR64へトビイロウンカ抵抗性遺伝子(BPH3, BPH17, BPH20, BPH25)の導入を進めている。これまでに、IR64とそれぞれの抵抗性遺伝子を保有する系統を交雑したF1に戻し交雑とDNAマーカー選抜を行い、BC2F1もしくは、BC3F1集団を作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネ遺伝育種については熱帯の直播イネ育種に使える害虫抵抗性に関する系統育成は順調に進んでおり、ターゲットとする東北タイ現地の研究者との共同研究体制も構築された。直播稲作の栽培技術改良と作付体系の高度化(乾季換金作物導入)についても、国際稲研究所を始めとする共同研究機関との協議に基づいて、一部については国際共著論文取りまとめまで進み、また残りについても具体的な試験結果が得られ始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究事業を引き続き展開する。熱帯アジアの現地において、農民による水稲直播栽培や乾季の換金作物栽培の実態解明を進める。教育研究から普及を見据えた農業技術開発を意識して、国際稲研究所、国立研究機関・地方自治体・農業省などとの協力関係を深める。このような熱帯アジア現場での研究展開と実証のサイクルに大学院生を含む若手研究者の参画を積極的に募っていく。トビイロウンカ抵抗性有望系統の育成については、抵抗性遺伝子がヘテロ型の個体をDNAマーカーにより選抜、選抜した個体を自殖し、BC2F2とBC3F2の種子を得る。これらの集団から、トビイロウンカ抵抗性遺伝子がホモ型の個体を選抜し、東南アジアで収集されたトビイロウンカ集団を用いて、抵抗性の評価を行う。また、可能であればタイのトビイロウンカ集団に対する抵抗性評価を行う。
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Causes of Carryover |
ターゲットとする熱帯アジア(特に東南アジア)各国の研究者との共同研究体制構築に時間を割いたため、大規模な包括的研究ネットワーク構築を先送りにした。熱帯現地での研究の一部については、充分な人数の技術協力者が必ずしも得られない場合があり、労力(人手)不足がフィールドワークにおけるボトルネックとなることが見られた。プロジェクト後半では、ネットワークをより強固にしてこのような人的資源不足を解消する。今後も、熱帯現地において農民による水稲直播栽培や乾季の換金作物栽培の実態解明を進める。大学院農学教育から技術普及を見据えた農業開発を意識して、国際稲研究所、国立研究機関・地方自治体・農業省などとの協力関係を強化する。またトビイロウンカ抵抗性有望系統の育成については、東南アジアで収集されたトビイロウンカ集団を用いて、抵抗性の評価を行う。また、可能であればタイのトビイロウンカ集団に対する抵抗性評価を行う。
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