2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18KK0203
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲垣 祐司 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50387958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石谷 佳之 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (60772043)
中山 卓郎 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70583508)
矢吹 彬憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 研究員 (20711104)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | 原生生物-細菌共生系 / 細胞内共生 / 生物多様性 / 海洋生態系 / 生態地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタバーコーディング(MB)データにより海洋中の細菌多様性を評価する際、既知生物由来配列に類似性のないMB配列も数多く検出される。このような実態不明配列の大多数は未培養の自由生活性細菌に由来すると推測できるが、海洋中には放散虫や有孔虫など多様な原生生物と共生関係にある細菌も知られており、共生細菌に由来するMB配列も存在すると考えられる。しかし、海洋中の細菌多様性に占める共生細菌の実態(宿主特異性の有無や宿主生物との生理学的な関係性など)は、まだ十分に把握されていない。本研究では、太平洋と大西洋に棲息する系統的に広範な原生生物を対象として、その共生細菌の単離とゲノムシーケンスを行う。我々は日本を基点にした太平洋での解析を実施し、その比較対象として大西洋での解析をColumban de Vargas博士(フランス・ロスコフ研究所)と共同で行う。de Vargas博士との共同研究は、我々の大西洋でのサンプリング調査の基盤を提供するだけでなく、同博士が先導した全球規模の海洋生物多様性研究であるTara OceansプロジェクトからのMBデータ(とくに公開されていないデータ)へのアクセスを保証することになり、本研究に極めて大きく貢献すると考えられる。我々は共生細菌ドラフトゲノムデータを比較解析し、①海洋共生細菌の真の多様性の解明と、②2海洋間で同一宿主細胞に共生する細菌(あるいは細菌群)が遺伝的に同一かの検証を行う。本研究の成果は、MB解析に対してより頑健な情報基盤を提供し、海洋中の細菌の多様性・進化・生態地理の統合的理解に大きく貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、1年次(2018年度)は2年次以降の海外サンプリング調査をふくむ一連の研究をのための準備期間と位置付け、2年次(2019年度)以降にフランス・ロスコフ海洋研究所・Columban de Vargas博士のグループと大西洋/地中海において共同サンプリング調査を計画している。そこで2019年1月に、稲垣(代表)と石谷(分担者)がロスコフ海洋研究所を訪問し、de Vargas博士と今後のサンプリング調査の場所、調査目的とする原生生物、調査の大まかな時期等について議論を行った。また日本近海でサンプリングされた放散虫、渦鞭毛藻等の原生生物を対象に、共生細菌を分離・ゲノムDNAサンプルを抽出するための予備実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年1月のフランス・ロスコフ海洋研究所・Columban de Vargas博士との議論で、同年9月にフランス・Villefranche-sur-Merにて共同サンプリング調査を行うことに決定した。、今後、先方と調査の詳細を詰め、予定に変更がなければ9月に調査を実施する。 本研究の主な対象生物種に対する今後の研究は以下の方針で行ってゆく。放散虫は今のところ実験室内で培養ができていないが、沖縄で例年5月下旬から6月一杯にブルームを引き起こす。そこでこの期間にサンプリング調査を行い、実験材料とする。有孔虫については、筑波大学で維持培養しているAmmonia beccariのゲノムデータ中に共生細菌ゲノムを探索する。またフランスにおけるサンプリング調査でもAmmonia属有孔虫を採取し、実験を行う。渦鞭毛藻に共生する細菌については、フランス(地中海)と静岡県下田市沖でのサンプリング調査で宿主細胞を採取する。未発表であるが既にゲノムデータが取得された日本産Diplonema japonicumとその細菌共生体と比較するため、フランスでも同種を探索・採取し、培養株確立を目指す。
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Research Products
(3 results)