2018 Fiscal Year Research-status Report
ミャンマーにおける生物インベントリーとABSに基づく共同研究体制の基盤構築
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18KK0210
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田中 伸幸 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40393433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00259996)
田島 木綿子 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00450635)
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10509417)
井手 竜也 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (80724038)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 生物多様性 / インベントリー / 生物相 / フロラ / ファウナ / 東南アジア大陸部 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミャンマーは,東南アジア大陸部西南端にあって日本の南方系生物の分布西限であるばかりでなく,東南アジア大陸部の生物相解明に重要な立地にある一方で,生物多様性情報の空白地帯である。しかし,近年の経済活動の活発化による生物多様性の危機を考えれば,生物相研究の加速化は喫緊の課題となっている。この課題の打開には,現地の関連分野の国際協力体制の基盤強化,長期視点での若手育成,人的資源の拡充が必須である。そこで本研究課題では,国立科学博物館とミャンマー森林研究所との国際共同研究として,いまだ未知領域に留まる同国の動植物・菌類の種多様性の解明を加速的に進展させ,最新手法を用いたインベントリーを共同実施することで,人的交流や技術移転を視野に入れたABSに基づいた生物相の学術的展開と中長期視点での共同研究体制基盤を確立することを目的としている。 平成30年度は,ミャンマーの森林研究所のカウンターパートである研究者と本研究計画について打ち合わせを行った。また,ミャンマーの動植物相に関するシンポジウムで知見を共有するとともに各大学の研究者なども招へいし,ミャンマー国内での生物多様性に関しての予備的な人的ネットワーク化を開始した。さらに,ミャンマー側の共同研究者と共にシャン州タウンジーとその周辺地域で菌類のインベントリー調査を実施したほか,パテイン大学およびミャンマー水産庁に収蔵されているミャンマー産鯨類の骨格標本調査を行なった。また,半島部アンダマン海メルグイ群島のマクレオド島およびニャンウーピー島において貝類のインベントリー調査を加速させた。その結果,これまでほとんど情報がなかったミャンマー産鯨類について,3種が証拠標本とともに記録され,そのうち1種は同国より新たに記録された。一方,菌類では多数のミャンマー新産種が明らかとなった。貝類では2未記載種を含む9種が追加された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,研究計画初年度として、本研究に関する準備として予定通り森林研究所と協議を行い、ミャンマーの生物相に関する会合を開催し、そこへこれまではほとんど情報がなかったミャンマー国内の研究者をヤンゴン大学、ミャイク大学、パコック大学などから招へいし、情報交換を行うことができた。また、参加者のメーリングリストか化を行い、発表論文などのPDFや研究の進展状況などについて情報の共有化、知見の還元を行うことができるようにした。一方で、研究課題の核心部でもある生物多様性の調査研究では、多数の新産種や新種と考えられるものの発見があるなど、概ね順調に進んでいる。その一方で、計画したミャンマー南部の調査地域についての共同研究機関での打ち合わせにおいて、中にはいまだに外国人の入域制限のある地域も多いことがわかった。今後は、調査地選定については、最も効率的なインベントリーが行えるように計画する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次年度(2年目)には、南東部のカヤ州、カイン州などの石灰岩地域、南西部のアラカン山脈を横断してベンガル湾に至るルートでの調査を共同研究として実施するとともに、貝類のインベントリーについては、アンダマン海の様々な島での調査を行なって、タイやマレーシア海域との比較を行いたい。データベースについては、最終標本データを整理し、次年度にHPを作成し、まずは植物標本についてある程度の標本数を登録して公開することを計画する。その後は、他の生物群を追加することを検討する。 3年目には、現地でシンポジウムを開催し、さらなる共同研究体制の基盤強化を図り、4年目の最終年度には、国立科学博物館上野本館でシンポジウムを開催し、ミャンマーのカウンターパートを招へいすることで双方の地域での一般への成果の還元、公開を推進する。この間、共同フィールド調査を実施することで日本側の若手の育成とともにミャンマー側の人材育成に国際貢献する。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していたデータベースへの標本データの入力について、入力システムのプログラミングに時間を要し、入力ができるようになったの時期が遅かったため、当初の計画より入力補助のアルバイト謝金の支出が少なくなったことなどによる。その分を次年度に使用し、謝金支出によって追加でデータ入力を行う計画である。
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