Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00259996)
田島 木綿子 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00450635)
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10509417)
井手 竜也 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (80724038)
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Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は,当初計3回のフィールド調査を実施する予定であったが,新型コロナウィルス感染症の拡大により現地調査は実施できなかったため,前年度までに収集した標本の検討を中心に行なった。種子植物では,ショウガ科ウコン属1種を記載したほか, 既知種のいずれにも合致しないクズウコン科について,形態学的研究および分子系統解析を行った結果, Schumannianthus属に近縁な新属であることが推定された。また,イギリスの雑誌『Curtis's Botanical Magazine』に,最近記載発表したショウガ科,シュウカイドウ科など4種についての報文を発表した。菌類では,前年度までに採集した全標本(計518標本)のDNA抽出を完了し,菌類の核ITS領域の塩基配列を決定した。塩基配列を基にBLAST検索をはじめとする解析を行い,ミャンマー産きのこ類とその近縁種の分布域から,ミャンマーとその他地域における菌類相の比較を行なった。菌類では少なくとも4目20科51属150種がミャンマー新産であることが明らかとなった。また,タマハジキタケ属のミャンマーからの初報告を論文発表した。昆虫では,イソウロウタマバチ族の1種を記載した。採集されたスズメバチ類の地理的分布を解析したところ,ミャンマーのスズメバチは,マレシアにも分布するものが98%,次いでインド80%,ヒマラヤ28%,タイ・インドシナ74%,中国南西部が50%の順に共通性が高かった。鯨類では,ミャイク大学のクジラ類の骨格標本を, カツオクジラ, ツノシマクジラ, シロナガスクジラの3種と同定した。貝類では、ヒザラガイについて, ゼンケンベルグ自然史博物館, ロンドン自然史博物館等所蔵のタイプ標本との比較を行ったところ, 昨年度にアンダマン海で採集した1種が新種であると推定された。成果の一部を半島部の動植物フィールドガイドとして出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度は,新型コロナウィルス感染症の世界規模での拡大により, 現地でのインベントリー調査ができなかったため, 前年度までに収集した標本の解析にとどまった。また, 本研究では、当初、2018年に現地でシンポジウムを開始し、国際共同研究としての成果の共有やこれまでミャンマーの国外に情報があまり出ることがなかった国内の研究者のネットワーク化は実現できた。ただ、計画としては、次に日本でシンポジウムを開始することで、広く日本国内でも成果発信と共有、社会還元をすることで、両国における研究成果の周知を行なう計画であったが、前年度に採集した現地調査2回分の標本類も新型コロナウィルス感染症の蔓延にともなうミャンマーから日本への航空郵便への影響から遅延しており、十分な標本資料の検討を行うことができなかった。研究実績の概要に記述した通り、既存の標本の解析研究からはさまざまな新知見が得られたものの、国際協力という観点、基盤構築における1年間のブランクが生じたため、全体として遅延を余儀なくされた。
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