2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Interdisciplinary Technology for Conservation and Restoration of Cultural Properties by Integrating Color Informatics and Material Science
Project/Area Number |
18KK0282
|
Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
奥田 紫乃 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (60352035)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 智子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (90755472)
岡嶋 克典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60377108)
|
Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
|
Keywords | 文化財 / 保存・修復 / 色彩情報 / 材料物性 / 評価実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
奈良女子大学所蔵の正倉院模造宝物6点(紅牙撥鏤尺,紅牙棊子,紺牙棊子,紅牙撥鏤手板,撥鏤帯鉤 紺地花喰鳥文,撥鏤帯留 朱地孔雀文,撥鏤帯留 朱地花喰鳥文)の、二次元分光放射輝度計による色彩情報の取得、及び蛍光X線分析装置による材料分析を実施した。その結果、紅牙撥鏤尺では象牙の彩色に顔料と染料が併用され、赤色箇所には正倉院宝物で用いられた臙脂とは異なる色材が使用された可能性があることについて、ACA2019で発表した。 豊原国周作の浮世絵"見立橋尽 日本橋 河原崎三升","江戸名所合之内 和尚次郎(七)"の色彩情報を、2次元分光放射輝度計を用いて様々な照射角度から取得するとともに、人工太陽照明灯装置を用いて色彩劣化過程における画像情報も取得した。取得データから、CIE-015に規定された12種の照明光源、3種の照度条件を再現する計78種のシミュレート画像を生成した。R2年2月に国際共同研究者のグラナダ大学のMelgosa教授と共に、これらの画像を視対象としたスペイン人による主観評価実験を実施した。同画像を用いた日本人による評価実験も実施途中である。また、本研究の知見はアルハンブラ博物館に展示されているナスル朝時代(12-15C)ムーア様式碑銘彫刻の照明評価研究にも反映された(Sensors 2019,19(24),5400)。 R元年10月にMadridを訪問し、複数の美術館でスペイン絵画を視察するとともに、ソフィア王妃芸術センター、ティッセン=ボルネミッサ美術館を訪問し、バックヤードの視察、及び美術館スタッフと情報交流した。また、Madrid Complutense大学で国際共同研究者のVazquez教授、Alvarez教授と研究の方向性を議論した。R2年3月に両美術館を再訪し、数点の絵画の色彩情報の測定を実施する予定だったが、COVID-19の影響により実施できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響により、マドリードでの実測調査ができず、国内でも外出自粛のため日本人による評価実験が完了していない。しかし、絵画や装飾品等、種々の文化財の色彩情報を取得・分析することにより、取得した画像情報データから様々な照明条件下での見えの再現するシミュレート画像を生成することができ、スペイン人による評価実験も完了した。また、購入した絵画を人工的に劣化させることにより、劣化過程における色彩情報も取得できた。国際共同研究者とは、E-mailを通してディスカッションを継続している。したがって、一部の未完了項目があるものの、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年3月にマドリードで予定していた絵画の色彩情報の取得について、社会状況を見ながら適切な時期に実施する予定である。また、各種照明条件下における浮世絵画像の日本人評価者による主観評価実験についても、社会状況を見ながら研究室実験を再開する。スペイン人による主観評価実験結果を分析し、AIC(国際色彩学会)にて発表する。また、スペイン人による評価と日本人による評価の違いを比較検討し、その要因について考察する。2019年度の実施した奈良女子大学所蔵の文化財(正倉院模造宝物)について、未分析の紅牙棊子、紺牙棊子、紅牙撥鏤手板、撥鏤帯鉤 紺地花喰鳥文、撥鏤帯留 朱地孔雀文、撥鏤帯留 朱地花喰鳥文の分析を行い、Lux Pacificaや日本文化財科学会など国内外の学会にて成果を発表する。 2019年度に取得した色材の劣化過程における色変化について分析し、美術品の劣化画像のシミュレーション手法を開発する。グラナダのアルハンブラ美術館に所蔵されている美術品(陶器やモザイクタイル)の色彩情報を測定し、種々の照明条件下におけるシミュレーション画像、及び劣化の度合いが異なるシミュレーション画像を生成する。
|
Causes of Carryover |
R2年3月に、マドリードの国立ソフィア王妃芸術センター、国立ティッセン=ボルネミッサ美術館を訪問し、所有する数点の絵画の色彩情報の測定を実施する予定であったが、COVID-19の影響により渡航禁止となり実施できなかったため、次年度使用額が生じている。今後、社会情勢を見ながら、渡航日程を再調整する予定である。
|
Research Products
(4 results)