2018 Fiscal Year Research-status Report
The interface between Earth Science and Global Policy-making
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18KT0006
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴田 明穂 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (00273954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 尚美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究開発センター長代理 (70344281)
稲垣 治 神戸大学, 国際協力研究科, 部局研究員 (90772731)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 国際法学 / 極域科学 / 南極条約体制 / 北極域の国際法政策 / 極域環境変動 / 極域海洋研究 / 生態系アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、極域研究を題材に地球科学とグローバル政策の適切な関係性につき、極域科学研究と国際法政策研究の融合によって解明を試みるものである。具体的には、(1)南極条約体制の強靭性研究、(2)極域における生態系アプローチの研究、(3)海洋生態系研究、(4)社会科学的研究と自然科学的研究の連携の方法論の開発を行う。 (1)につき、研究代表者の柴田を中心に研究基盤を構築することができた。具体的には①Policy-Law-Science Nexus in Antarctica (PoLSciNex)と題する国際研究プロジェクトを立ち上げ、2019年3月にチリ・サンチアゴで最初の研究集会を開催した。②「南極条約体制の将来の挑戦に対する強靭性」と題する国際研究プロジェクトを、タスマニア大学のJabour博士と立ち上げ、12月に神戸で初回会合を開催した。 (2)につき、研究分担者の稲垣を中心に研究を進め、『北極国際法秩序の展望』と題する編著書を発刊し、ここで今後の研究方針を明らかにした。 (3)につき、研究分担者の原田を中心に研究を進め、南極地域観測隊長としての経験に基づき下記(4)の国内研究会に情報提供できる素地ができた。 (4)につき、研究者と関係ステークホールダーとの対話型連携方法を模索するために、「南極をめぐる科学と国際動向に関する研究会」を立ち上げた。ここに極域の自然科学研究者と社会科学研究者を集め、加えて日本の南極政策を担う外務省、文科省、環境省の担当官に参画してもらい、南極の科学と政策を題材にまずはお互いの学術的、政策関心を共有するところから始めた。10月、12月、3月に3回の研究会を開催した。同様に、社理連携研究の方法論開発の国際版としては、上記(1)①で挙げたPoLSciNex研究がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)の南極条約体制の強靭性については、国際研究プロジェクトが2つ立ち上がり、その研究メンバーもほぼ確定して、今後の研究の具体的進展が期待できる。 (2)の生態系アプローチ研究も、関連する書籍出版により研究の方針と枠組が整い、さらに南極における海洋保護区設置をめぐる議論を「合理的な利用」の解釈を通じて国際法的に考察することができた。 (3)の海洋生態系研究も、南極観測隊での経験を基に研究活動を充実させる方針と材料が明確になり、2019年度以降、研究会や学会での報告に結びつける素地ができつつある。 (4)の社理連携研究の方法論についても、「南極をめぐる科学と国際動向に関する研究会」が軌道にのり、2019年度以降も具体的に研究集会が企画されている。国際的には、PoLSciNex研究が南極研究科学委員会(SCAR)の下で進められることになっており、進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の南極条約体制の強靭性研究については、2019年4月の国際学会(アルゼンチン・ウシュワイア)で進捗を報告をする。2019年7月第42回南極条約協議国会議の諸議題を検討し、社会科学研究の政策的インプットにつき具体的に検討する。2019年12月第12回極域法国際シンポジウム(タスマニア・ホバート)において、特別セッションを開催し研究進捗を報告する。これら研究を、2020年11月に神戸大学で開催する第13回極域法国際シンポでの研究アジェンダ設定及びその準備に結びつける。 (2)の生態系アプローチ研究については、2019年5月第4回中央北極海における統合的な海洋生態系アセスメント会合に出席し、最先端の情報を収集する。南極条約体制における生態系アプローチの展開やその課題について検討を進め、上記(1)のプロジェクトの一環として、研究を進める。 (3)の海洋生態研究については、「南極をめぐる科学と国際動向に関する研究会」に参加して、情報提供、関心共有を図る。連携研究者の木村と共同で、一般市民向けに、自然科学と社会科学連携の課題抽出とその解決法を示したボードゲームを製作し、科学未来館などのファシリティを拠点に計画の推進を行う。その成果につき、12月極域法国際シンポでの報告を検討する。 (4)の社理連携研究の方法論開発については、引き続き、「南極をめぐる科学と国際動向に関する研究会」を開催し、少しずつテーマをより具体的にして、自然科学研究・社会科学研究・政策立案とが重なり合うトピックを収斂させていく。南極ロジスティックないし科学基地の国際法政策的インプリケーションにつき考察を深め、12月極域法国際シンポでの報告を目指す。PoLSciNex国際研究を継続し、国際的にも社理連携研究のあり方につき考察を深め、2020年11月第13回極域法シンポでの集大成を目指す。
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Causes of Carryover |
神戸大学配分額のうち50万円程度が繰り越しになったのは、予定していたチリ及びアルゼンチンでの研究報告会が先方の都合で年度を跨いで開催されることとなったため、復路分の旅費及び4月分の滞在費相当分を繰り越した。 海洋研究開発機構配分額のうち30万円程度が繰越になったのは、分担者本人が南極地域観測隊として南極に赴くことが本科研費採択より前に決まっていたこと、2019年度開催の第12回極域法国際シンポジウムの開催場所がオーストラリアのホバートのため、そこに参加する旅費や学会登録費用として2019年度に配分される分担金の不足分を補う必要があるため、繰り越すこととした。
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