2019 Fiscal Year Research-status Report
How to predict the collapse of homeostasis in circulatory regulation
Project/Area Number |
18KT0073
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
石川 義弘 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40305470)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 孝之 横浜市立大学, 医学部, 講師 (40468202)
横山 詩子 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70404994)
梅村 将就 横浜市立大学, 医学部, 講師 (50595353)
齋藤 純一 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (30779301) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2021-03-31
|
Keywords | 心筋細胞 / アデニル酸シクラーゼ / カルシウム / 不整脈 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
心機能制御の中心は交感神経である。神経シナプス末端から分泌されたノルアドレナリンが、心筋膜表面上のベータ受容体に結合して、刺激性G蛋白質を活性化する。G蛋白質はアデニル酸シクラーゼ酵素を刺激して、ATPを基質にセカンドメッセンジャーcAMPを産生する。心筋細胞内cAMPの上昇は、L型カルシウムチャネルをはじめ、フォスフォランバンなどの収縮関連蛋白をリン酸化し、カルシウムの細胞内流入が増やすとともに、収縮蛋白のカルシウム感受性を増す。本申請では、交感神経による機能制御として、心筋細胞におけるカルシウムとcAMPシグナルの数理的な制御解析を対象として、不整脈に代表される循環制御における恒常性の破たんを数理科学的に予測するシステムとして確立する。我々が過去四半世紀にかけて積み上げてきた薬理学的かつ分子生物学的実験などの結果を、複雑系の数理科学的な概念と方法で統合し、不整脈をはじめとする疾患モデル解析に統合していく。本研究の具体的な内容は、これまで独立した研究対象となってきたcAMP産生機構とカルシウム調節機構を、数理科学モデル研究において生体システムとして統合することであり、不整脈予測モデルとして開発することである。とりわけ両機構の主体をなすアデニル酸シクラーゼとその下流の分子、さらには電位依存性L型カルシウムチャネルに標的をあて、カルシウムとcAMPをメッセンジャーとして両者の活動が時間的・空間的にどのような制御を受けるのかを数理的に検証し、そのクロストークの乱れがホメオスタシスの破たんとなり、不整脈などの疾患発症となると考えている。とくに交感神経の過剰緊張や心不全時の圧負荷が重要と考える。我々の研究室では、時間空間的な物理因子に加えて、遺伝子発現あるいは欠損による酵素分子の量的変動を、薬理的な手法を駆使して細胞および個体レベルで検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では交感神経による機能制御として、心筋細胞におけるカルシウムとcAMPシグナルの数理的な制御解析を対象として、不整脈に代表される循環制御における恒常性の破たんを数理科学的に予測するシステムとしての実験を進めている。まずは多様な不整脈の中から、もっとも頻回にみられる心房細動をモデルとした。心房細動はマウスモデルでは実現が困難とされてきたが、我々の研究室では、マウスに対して経食道的に心房に対してオーバーペーシングを行い、サプレッション後に心房細動を誘発させるモデルを検討した。旧来の不整脈モデルでは心房細動は誘発されるものの、持続時間が数秒程度と短いため、一般論における心房細動を不整脈と考えた場合の抑制試験が組みにくい。そこで我々は、マウスにおける交感神経と副交感神経の均衡を乱すためにノルアドレナリンを投与し、その後に経食道的なオーバーペーシングを施行した。自律神経系のバランスを交感神経優位に傾けることによって、従来の数秒程度の不整脈の持続が、数分~十分程度に延長することに成功した。ノルアドレナリンは、心筋細胞内のカルシウム流入を助長させることから、カルシウムとcAMPシグナルの均衡の破綻が、不整脈の悪化を引き起こしたと考えられた。我々はさらに様々な遺伝子操作動物において、カルシウムシグナル変化を観察したが、cAMPシグナルの下流分子の一つであるEpacの欠損によって、小胞体におけるカルシウム変動の減少を確認することができた。カルシウムの過負荷は不整脈を引き起こすことから、Epacシグナルの薬理学的な抑制が有効であることが実証された。このことはEpac分子が不整脈予防の標的となりうることを示唆する。さらにcAMPシグナルが細胞死に関与する結果も得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終到達目標は、これまで独立した研究対象となってきたcAMP産生機構とカルシウム調節機構を、数理科学モデル研究において生体システムとして統合することであり、不整脈予測モデルとして開発することである。とりわけ両機構の主体をなすアデニル酸シクラーゼとカルシウムに標的をあて、カルシウムとcAMPをメッセンジャーとして両者の活動が時間的・空間的にどのような制御を受けるのかを数理的に検証し、そのクロストークの乱れがホメオスタシスの破たんとなり、不整脈などの疾患発症となると考えている。とくに交感神経の過剰緊張は重要と考える。これまでの研究成果では、時間空間的な物理因子に加えて、遺伝子発現あるいは欠損による酵素分子の量的変動が重要であることを突き止めている。これまで実現困難とされていた長時間持続型の心房細動モデルを、交感神経の過剰緊張を薬理学的に誘発することにより、確立することに成功した。そこで本モデルをもちいて、カルシウムとcAMPシグナルの関連の検討を続ける。具体的には、交感神経の過剰緊張によってカルシウムシグナルの負荷がどの程度起こるかを数理モデルと合わせて検討する。さらに我々の先行研究において、Epacシグナルを抑制ないし欠損させることにより、心房細動を抑制することに成功しており、さらに数理モデル解析において、Epacシグナルの欠損がカルシウムシグナルを減弱させることを確認している。Epacについては遺伝子操作による欠損だけでなく、薬剤化合物による選択的な抑制が可能である。そこでEpacの薬理学的な抑制による不整脈抑制効果を検討するとともに、薬剤による抑制効果を数理モデルを通じて検討していく。さらにcAMPシグナルと細胞生存性との関連についても検討する。
|
Causes of Carryover |
2019年度末より発生したコロナウィルスの蔓延により、予定していた学会が全て中止ないし誌上開催となり、出張が全てなくなる等したため繰り越しが生じた。
|
Research Products
(22 results)