2021 Fiscal Year Research-status Report
臨床音楽学研究:知的障害者を含む音と言葉による対話の場の構築
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18KT0082
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
沼田 里衣 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (10585350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 なほ (ほんまなほ) 大阪大学, COデザインセンター, 教授 (90303990)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2023-03-31
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Keywords | コミュニティ音楽療法 / 臨床音楽学 / コミュニティ音楽 / 臨床哲学 / 対話 / 即興音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度新型コロナウイルス蔓延の影響で困難であった対面での実践研究を可能な範囲で進めつつ、これまでの研究成果を学会で発表し、論文執筆をおこなった。しかし、本臨床音楽学研究は、実践における対話を重要な研究の一部としているが、その実施が企画しても困難となることが多く、引き続き延長することとした。 実践の場における音や言葉を使った対話の手法については、即興音楽ワークショップにおいて、音楽づくりの手法そのものから参加者と考える方法をまとめ、日本音楽即興学会で発表した。その意見交換では、特に教育の領域に取り入れることの課題が指摘され、今後はその解決に向けた方向性を探る必要があることが確認された。また、論文執筆に関しては、音やからだを使った表現活動と共にある言語的対話について、「おとあそび工房」における対話を取り上げ、その意味を分析した。その結果、こうした対話の営みは舞台上の具体的な表現活動のみならず、さまざまに異なる背景をもつひとたちが異なるコンディションにありながらともに表現に向かう実践の重要な部分であること、また、この活動が固定されることなく変容していくための本質的な部分であることが見出された。これにより、理論化に向けた基盤を作ることができた。 また、研究分担者のほんまは、フェミニズム哲学の視点を取り入れ、対話について研究した成果を論文にまとめた。こうした成果は、臨床とは何かを考える際に重要な知見をもたらした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画のうち、実践研究の実施、調査・分析は行うことができたが、公開研究会と理論化に向けては、もう一歩踏み込んだ展開が必要である。公開研究会に関しては、「おとあそび工房」を取り上げた論文について、現場において語り直し、更なる変容に向けて対話を進めることが必要である。また、理論化に向けた議論は、臨床とは何かを吟味した上で、より精緻に「臨床音楽学」とは何かを考察すべきであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
対話実践は、遠隔の場合困難な部分が多く、またマスク着用によっても表情によるやり取りが阻害されるという点で障害が大きい。こうした状況の中、環境を整えて対話実践を継続することは、困難を伴う。しかしながら、感染状況を見つつ、研究成果を発表し、更なる対話につなげられる方法を開拓したいと考えている。具体的には、オンラインと対面の要素を併用し、対面のみではなし得なかった利点を取り入れつつ進める方法である。理論化に向けては、多方面でのゲストを招聘して研究会を実施し、「臨床音楽学研究」とは如何なるものであるかを明文化したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延のため、実施予定で企画した対話とその成果発表を行うことができなかった。次年度は、状況を見つつ、可能な形で実施したいと考えている。
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Research Products
(5 results)