2018 Fiscal Year Research-status Report
Japan's Genetic Resources: Turning Nobiru into a Crop
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18KT0092
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
福田 伸二 佐賀大学, 農学部, 准教授 (70503770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 一里 佐賀大学, 農学部, 教授 (00176869)
石丸 幹二 佐賀大学, 農学部, 教授 (40223028)
萱島 知子 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (90452599)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 山野草 / 農作物化 / ノビル / 遺伝資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
ノビル164系統に関する13項目のデータを主成分分析した。各項目の因子負荷量をみると,第1主成分x軸は最大りん茎重の値が0.471となるなど植物体の肥大性と相関が高く,第2主成分y軸は分球数の値が-0.560となるなど増殖性と負の相関があった.このように,図の右下に行くほど地上部・地下部両面で高い収量性を示す系統がプロットされた.中でも大分県杵築市から採取した系統(第1図右下の+点二重下線=WOO203)は可食部が非常に長大で重量があり,分げつ・分球性も高い有望系統であった.供試系統を地方別にみると,東北地方の系統は左上部に位置し,収量性に乏しい系統が多く, 中部地方は左側に位置し,植物体毎のサイズが小さいことが明らかになった.関東および四国地方の系統は図の上部に多くの系統が位置し,分げつ・分球性が低い傾向にあった.また,九州地方の系統は図の全面に点在しており,多様性の高さが考えられた. 佐賀大学構内で採集したノビル葉の60%エタノール抽出エキスについて各種カラムクロマトグラフィーを行ない、新規成分としてカフェー酸のグルコースエステルを単離した。その化学構造は、各種機器スペクトルの解析により、カフェー酸のテトラグルコシドと決定し、allimacronoid B-2と命名した。ノビル葉には、フェルラ酸やkaempferolの配糖体類も多種含まれており、特にソフォロシド構造を有する配糖体類が多く含まれていることを明らかにした。これらの結果は、ノビルを機能性野菜として利用する際の、有用な化学的データとなる。 ノビルの嗜好性の評価として、嗜好型パネルによる官能評価を行なった。その結果、ノビルのみの場合は味と香りの評価が低いが、肉料理では肉の臭み消しに有効であることが明らかとなった。ノビルの特有の風味を活用することで、食材としての利用の幅が広がることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノビル遺伝資源有望系統の選抜:当初の目標であった150系統の遺伝資源について、同一条件下で栽培試験を行い、りん茎の肥大性、増殖性、食味性、抽苔時期および加工特性を調査し、データベースを作成した。 機能性成分高含有系統の選抜:我々の先行研究においてノビル茎葉から発見した新規フェノール成分(ポリグルコースが結合したフェルラ酸配糖体類やカフェー酸配糖体類)を指標として、日本全国から収集した遺伝資源数百系統について分析し、これら成分の高含有系統を選抜する。分析は、春季(4月)と秋季(11月)に茎葉を有機溶媒で抽出し、得られるエキスを高速クロマトグラフィー(HPLC)にて測定することで行う。また、構造未決定の新規フェノール配糖体類を数種確認しているので、その成分の抽出、構造解析に適した高含有系統を検索した。 ウイルス病感染状況調査:採集したノビル遺伝資源の同じネギ属に感染する病原ウイルスの感染状況調査を行う。本年度は、特にニンニクやラッキョウに被害を与えているウイルスについて調査し,ウイルスのゲノム構造を明らかにした。 嗜好性評価方法の確立:ノビルの嗜好性の評価として、まず味の特徴を明確にするために、味覚センサー(味認識装置TS-5000Z)による先味(苦味雑味、渋味刺激等)と後味(苦味、渋味など)の分析を行う。センサーでの分析に限界がある甘味については糖度計にて測定する。試料とするノビルは全体及び部位別に分け、さらに実際の調理を想定し生、浸水、熱水加熱別で分析する。類似食材としてニンニク、ネギ等の結果と比較し、ノビルの味の特徴を明らかにした。以上の事より、順調に研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ノビル遺伝資源の有望系統の選抜:平成30年同様に遺伝資源の栽培試験を行い、信頼性の高いデータを出す。 新規機能性成分の探索:平成30年度に検索、選抜した新規フェノール成分を高含量で含むノビル系統を材料とする。茎葉及びりん茎を含水エタノールで抽出し、得られるエキスをセファデクスゲルやODS系ゲルを担体とした各種カラムクロマトグラフィーにより精製する。微量成分については、分取用HPLCを活用して単離する。単離した成分について、NMR等の機器分析を行い、得られるスペクトルデータの解析により構造を決定する。 病原ウイルスとノビルの地域性や生産性との関係性解明:全国で発生しているウイルスについて網羅的にゲノム解析後、分子生態学的・分子進化学的に調査し、また宿主であるノビルについても分子生態学的・分子進化学的に調査し,地域性や生産性との関係性を解明する。 嗜好性評価方法の確立:前年度の結果を参考に評価項目を設定し、ノビルの味、香り、食感、外観等について嗜好型パネルによる官能評価を行う。これにより類似食材との比較より明らかになった味の特徴が、ヒトでも認識できるか明らかにする。また、特有の風味の要因となる味と香りについて、強さと好みの関係を検討する。
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Research Products
(4 results)