2011 Fiscal Year Annual Research Report
活動依存的カルシウム流入による競合的シナプス回路発達の共通原理の解明
Project/Area Number |
19100005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 雅彦 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70210945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
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Keywords | シナプス / 脳 / 発達 / 小脳 / 大脳皮質 |
Research Abstract |
小脳プルキンエ細胞においてカルシウム濃度上昇を媒介する最も主要な分子機構は、登上線維の強い脱分極作用により活性化して樹状突起にカルシウム流入を引き起こすP/Q型カルシウムチャネルである。本年度は、このカルシウムチャネル本体を構成するCav2.1のプルキンエ細胞選択的欠損マウス(Cav2.1-PC-KOマウス)を用いて、シナプス後部に発現するこの分子のシナプス回路発達や細胞機能制御における役割を検討した。その結果、以下の所見を得ることができた。 1)Cav2.1-PC-KOマウスでは、近位樹状突起を支配する登上線維の支配領域が減少し、本来、遠位樹状突起を支配する平行線維の支配領域が近位に向かって拡大した。 2)複数の登上線維による多重支配が成体期においても残存した。 3)分子発現に関する小脳コンパートメントの境界が翻訳後修飾のレベルで不明瞭化した。 4)生後3週以降より、プルキンエ細胞の細胞死が出現し、特に進行した。 以上の結果より、プルキンエ細胞に発現するP/Q型カルシウムチャネルは、一本の優勢な登上線維の強化分子機構として機能し、それにより平行線維と登上線維によるテリトリー的支配の形成と単一支配化という競合的シナプス回路発達に不可欠であることを示している。さらに、P/Q型カルシウムチャネルを介するカルシウム流入は、プルキンエ細胞のコンパートメント的な分子発現と細胞生存にも関わることも示している。
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