2009 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト、メンフィス・ネクロポリスの文化財保存面から観た遺跡整備計画の学際的研究
Project/Area Number |
19100010
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 作治 Waseda University, 理工学術院, 教授 (80201052)
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Keywords | 文化財 / 保存科学 / 材質分析 / 考古学 / 観光 / 環境マネジメント / 地質 |
Research Abstract |
本研究は、エジプト、メンフィス・ネクロポリスの遺跡保存整備計画策定のための学際的な研究である。2009年度もこれまでに継続し「遺跡の重要性の理解のための調査」および「将来に影響を及ぼす要素の調査」を実施した。まず、前者では、早稲田大学が調査を実施しているアブ・シール南遺跡およびダハシュール北遺跡における遺跡保存整備のための地理情報システム(GIS)の導入を可能にするためUTM座標が設定され、それに基づく三次元地形測量が実施された。これにより以前より正確かつ詳細な地図を作成することができた。また、アブ・シール南丘陵遺跡においては未知の地下埋蔵文化財の分布を把握するために物理探査を実施した。同時に、既に発見された遺構に関しては三次元レーザー・スキャンによる測量を行い、基礎データを入手した。これらのデータは今後の遺構の保存修復に役立てられる。さらにマクロなレベルでは、人工衛星からのリモート・センシングによる遺跡の観測結果との照合のための調査が実施され、当該地区の遺跡の分布や古環境の復元で重要な知見を得ることができた。 アブ・シール南丘陵遺跡の考古学調査では、2008年度に発見された新王国時代第19王朝のトゥーム・チャペルから北へ約10mの地点から土器を納めたピットが発見された。ピット内の土器は、出土状況や器種組成などから埋葬儀礼に使用された土器である可能が高い。その他には、ラメセス2世の孫娘イシスネフェルトの保存修復作業、埋葬室で出土した人骨の人類学的研究、保存修復に向けた出土遺物の材料の化学分析等が実施された。ダハシュール北遺跡の考古学調査では、新たに10基のシャフトの発掘を行い、中王国時代および新王国時代の埋葬を発見した。出土した副葬品の中には、これまでメンフィス・ネクロポリスであまり発見されていない類の遺物があり、当該地区の遺跡の理解に新たな情報を提供することができた。
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Research Products
(23 results)