Research Abstract |
(1)産卵場所選択の行動生態学的研究 水田と水路が隣接する場所でミヤマアカネの産卵場所選択を調査した.ミヤマアカネは水田より水路で多く産卵すること.流速がゆるく水深が3cm以下であればコンクリート水路でも土水路でも産卵することがわかった.ミヤマアカネは水田でも産卵するが,水田1筆を単位としてみた場合,ミヤマアカネ産卵ペア数とアキアカネ数に負の相関が検出された.ミヤマアカネはアキアカネなど同属種との競合やギルド内捕食を回避するために水路を選択している可能性がある. (2)光受容器の部位局在性に関する反射スペクトルおよび微細構造の解析 アオハダトンボ成虫の複眼の成熟に伴う変化に伴った体色及び行動の変化を観察した.アオハダトンボ雄の翅は成熟に伴って,多層膜干渉による構造色を発色した.成熟個体が未成熟個体に比べて遠距離の餌に反応していることを明らかにした.また、アサヒナカワトンボとニホンカワトンボの2種の視覚生理学特性について比較を行った.電気生理学的実験により細胞外記録及び細胞内記録を試み,応答感度と応答開始までの潜時について,2種の違いは見られないことを明らかにした.個眼の構造にも大きな違いは見られなかった.また高速液体クロマトグラフィーにより視物質発色団の同定を行ったところ,両種共にA1とA3が検出された. (3)野外実験による群集ダイナミクスの解析 コンテナを圃場に設置し,その中にできたトンボ幼虫群集を調査した.ギンヤンマ,シオカラトンボ,アキアカネ,コノシメトンボ,ノシメトンボ,オオアオイトトンボ,キイトトンボ,ホソミオツネントンボなどのトンボ類の他,ミジンコ,ワムシ,ユスリカ,ミミズ,アマガエルなどの群集が形成された.ギンヤンマが最も強力な捕食者で、ギンヤンマが複数存在したコンテナからは,他の種のトンボはごくわずかしか羽化せず,ギルド内捕食の影響の大きさが明らかだった.
|