Research Abstract |
本研究は,脳・神経・筋肉の信号源を用いて人と機械の相互通信や意図認識を実現する技術の研究であり,人・機械相互適応システムを構築することを目的とする.平成21年度は,上肢及び下肢運動の両方に対する機能代替と機能回復を目的として運動補助ための技術開発と臨床評価を実施し,下記に示す3点の成果を得た. 1)「脳の計測と解析」「センシングデバイスの検討」:表面電気刺激によるファントムセンセーション(幻覚)を利用した感覚提示手法を確立し,これまで開発してきた筋電義手に実装し脳機能評価を実施した.これにより非侵襲生体信号を用いた個性適応型情報処理による義手の随意制御と同時に,義手により獲得される外界情報を適切に人に感覚フィードバックが可能となり,人が潜在的にもつ適応機能に合致するように機械の適応機能が設計可能な人・機械相互適応モデル構築を実現した. 2)「基盤技術の確立」:これまでの個性適応型情報処理を改良し,人が潜在的にもつ適応機能の機能レベル(習熟度)によって,推定関数パラメータを調整する新しい自己組織的な運動推定手法を確立した.この習熟度により,使用者の残存機能の探索が可能となり,習熟度に基づく訓練システム構築が可能となる.また,10数名の被験者実験により,これらシステムを用いた訓練前後では,運動推定結果が約21%改善されたことを示した. 3)「応用・有用性の検討」:日常生活のための運動機能代替機器への応用として,これまで義手に加え,手指麻痺者のための外骨格型リハビリテーション装置の開発を行った.ワイヤ駆動閉リンク機構を採用し,指の個人差を吸収する高い装着性,携帯性,高駆動出力を実現した.また,弛緩性麻痺患者7名による臨床評価試験を実施し,理学療法士や介護者が麻痺患者に容易に装置を麻痺指に装着できる簡便性を有していることや,リハビリテーションに十分な駆動トルクを有していることを確認した.
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