2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19208028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 正一 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10143314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 真由美 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (50332474)
坂本 健太郎 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教 (80374627)
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Keywords | 環境汚染 / 野生動物 / プレデター / 化学発癌 / シトクロムP450 |
Research Abstract |
野生動物の場合、各々の動物種で実験動物とは異なる外来化学物質の代謝的活性化(毒性化)経路を持っており、実験動物のみの研究結果からそのリスクを外挿することは難しい。化学物質による生態系の破壊は、最も検知しにくく、しかも不可逆的な場合が多い。化学物質による「発癌」という状況は、これまでの予備的な調査からも、野生動物の間で、少しずつであるが、確実に進行していることは明らかである。化学発癌が生態系に与える影響についてはまったく情報が無いが、その実態調査は獣医学領域における急務である。そこで、本研究では、ヒトが生産・放出する化学物質の希少大型野生動物への化学発癌リスクを初めて評価し、生物保全のための研究を推進する。 平成19年度は、動物園や国内から希少生物の採集を行った。食肉目、霊長類、有袋類、ペンギン目、偶蹄目、奇態目、げっ歯目など多種類の動物より、化学発癌のキーとなる酵素であるCYP1Aを中心にクローニングもしくは酵素活性の測定や、Amesテストによる変異原性試験を行った。特に偶蹄目や奇態目では、他の哺乳類に比べるとCYP1Aの発現レベルが高かった。通常、CYP1Aによって活性化される癌原物質は、CYP1Aによる代謝後に第II相抱合酵素によって速やかに解毒の経路をたどるが、この抱合活性は偶蹄目・奇態目では他の哺乳類とレベルが変わらず、癌原物質の代謝的活性化とその後の代謝経路から考えると、潜在的にこれらの種では癌原物質のリスクを受けやすいことが明らかとなった。またCYP1Aの解析について、特に食肉目ではライオンなど希少生物の全長クローニングに成功し、現在、発現実験によるcharacterizationを試みている。
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