2010 Fiscal Year Annual Research Report
韓国鍮器調査を基点としたアジア地域の青銅器熱処理技術研究の展開
Project/Area Number |
19300299
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (60443420)
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Keywords | 高錫青銅器 / 熱間鍛造 / 焼入れ温度 / 韓国工房調査 / インド工房調査 / 国際研究集会 / 二元系高錫青銅器 / 焼き鈍し |
Research Abstract |
韓国で今も生産される高錫青銅器の熱処理を、韓国の工房で調査し、焼入れ温度等を測定した。それを基点として、インドでの高錫青銅器工房調査へ展開し、熱間鍛造による高錫青銅器製作工程を記録した。ミャンマー、インドネシア、日本の高錫青銅器製作資料を収集し、アジアの高錫青銅器技法比較を試みた。こういった研究を基盤として韓国、中国、インド、日本の高錫青銅器研究者を東京に招き、平成22年度国際研究集会として、本研究の最終年のまとめを行った。国際研究集会の主な成果は以下の通りである。紀元前1千年紀前半のインド亜大陸の遺跡から出土した熱間鍛造に適した錫22%、銅78%の二元系高錫青銅器があり、確認できる最も古い遺物で、インド亜大陸は高錫青銅器技術確立地域と考えられ、西方では二元系高錫青銅器製作の伝統は無く、その後、中国へは漢代以前に伝わり、さらに韓半島へ伝わった。南インド巨石文化(紀元前1000-500年)において最も古い高錫青銅器が出土し錫20~25%であり、焼入れ前に加熱鍛造がされ、容器のいくつかは口縁が0.2-0.8mmと薄く精巧な作りである。ハラッパー文化はほとんどが純銅製品で、ハラッパー遺跡・モヘンジョダロ遺跡の青銅器177点では30%が青銅で、錫12%が上限であり、斧の銅製品は非加熱状態での鍛造による製法であった。中国二里頭期には錫23%の釣針が作られ、商代になり鋳造技術とともに焼き鈍しや熱間鍛造技術が伝わっていた可能性が有り、西周代には錫22%の高錫青銅器や、刃部が錫22%の焼き鈍しと冷間鍛造の犬が有る。現代の錫22~23%の高錫青銅器工房の熱処温度をサーモグラフで計測すると、インドの3工房では鍛造温度は646~687℃、焼入れ温度725~730℃、韓国5工房では熱間加工温度は628~657℃、焼入れ645~740℃であり、古代においてもほぼ同様の加工法であったと考えられる。
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