2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島を挟む2定点での海洋生態系変化と微量元素循環の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
19310001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
乗木 新一郎 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (80109511)
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Keywords | 日本海 / 西部太平洋 / セジメントトラップ / オパール / バリウム / 人為起源鉛 / マンガン |
Research Abstract |
日本海での微量元素の挙動について、海洋における輸出生産のプロキシとして注目されているバリウム(Ba)について調べた。日本海盆南東部(41°01'N,138°00'E;水深3623m)の深さ1460mと3570mにセジメントトラップを設置して沈降粒子試料を採取した。全粒子束は、上層・下層ともに、夏から秋にかけて極小(上層:22mg/m^2/day、下層:33mg/m^2/day)となり、冬から春(2月から4月ごろ)にかけて極大(上層:407mg/m^2/day、下層:283mg/m^2/day)が見られた。オパール粒子束は上層・下層ともに3月から4月にかけて大きかった。 過剰マンガン(Ba_<xs>、陸源成分を除いた部分)束は,8月から11月にかけて低く(上層:9-23μg/m^2/day,下層:10-24μg/m^2/day),上層は3月,下層は3月から4月に極大が観測され(上層:145μg/m^2/day,下層:78-85μg/m^2/day),ほぼ全ての期間で上層が上回っていたが,9から10月にかけては差が殆どなかった。沈降粒子中のMn_xs(陸源成分を除いた部分)は沿岸堆積物から溶出したMnが主な起源である。このためMn_<xs>は大陸棚や大陸斜面からの粒子の水平輸送の指標となることが知られている。Mn_<xs>,とBa_<xs>の粒子束との関係をみたところ、上層と下層共に、正の相関(上層でR=0.97,下層でR=0.96)を示した。すなわち、バリウムは表層での生物活動によって生物粒子に取り込まれる、そののち、分解して再溶出した部分がMnとともに、水平的に循環していることを示唆している。 人為起源の微量金属の海洋への影響について西部太平洋の定点(44°00'N155°00'E:水深5200m)の770mと5100mに設置したセジメントトラップで得た沈降粒子試料中の鉛の同位体から考察した。鉛-206、鉛-207そして鉛-208の精密測定法を確立した後、試料をICP-MS(四重極プラズマ発光分析)で測定した。その結果、770m層では約90%が、5100m層では約80%が人為起源の鉛であることが分かった。そして、同位体比から、その起源は中国都市エアロゾルの可能性が高い事が示唆された。
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