2009 Fiscal Year Annual Research Report
医療用放射線トラック解析へ向けた生体内分子の電子衝突断面積の決定
Project/Area Number |
19310033
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊達 広行 Hokkaido University, 大学院・保健科学研究院, 教授 (10197600)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 博一 苫小牧工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (20106131)
酒井 正春 北海道大学, 大学院・保健科学研究院, 教授 (50162269)
|
Keywords | 放射線照射 / DNA構成類似物質 / 電子線トラック解析 / 電子衝突断面積 / 電子スオーム法 / ATS実験 / 電離・励起衝突 / 細胞生存率曲線 |
Research Abstract |
本研究は、放射線照射によって生体組織中に多数発生する電子線のトラック解析に必要な、生体構成分子の電子衝突過程を、電子スオーム解析によって明らかにすることを目的としている。生体物質中での電子線の飛跡解析に資する情報を得るため、今年度は、細胞を構成する基本分子に類似した分子として、ベンゼン(C_6H_6)やトルエン(C_6H_5CH_3)、エタノール(C_2H_5OH)を採り上げ、それらガス中のパラメータを求めた。これにより、環状構造を有するベンゼンが、DNAやRNAを構成する類似分子にかなり近い電子衝突特性を有することが示唆された。また、付加的に、生体適合材料の表面処理や半導体ドライエッチング用のガスとして広く用いられているCF_4(オゾン層破壊をもたらす特定フロンガス)の代替となりうるCF_3Iガス中での測定も行った。一方、電子線トラックのマクロな挙動に着目し,トラックが生体細胞中の核を通過する頻度から細胞死をもたらす確率を推定するモデルを立て、放射線量に対する細胞生存率曲線の公式を導いた。 本年度における成果を以下に列挙する。 (1)ベンゼン、トルエン、エタノール中で電離係数やドリフト速度を測定した結果、ベンゼンのような環状分子では、比較的低電界の条件にて電離係数が顕著に小さくなる特徴を示すことが明らかとなった。なお、昨年度測定したメタンについての成果は、J.Appl.Phys..誌で公開された。 (2)CF_4の代替ガスとなりうる可能性を有したCF_3Iガスの特性を調べ、その成果がAppl.Phys.Lett.誌に掲載された。 (3)水中電子線トラック解析を、種々の初期電子エネルギーに対して行い、電離・励起が凝集して起こる過程をAI(aggregation index)という指標で評価すると共に、細胞核を通過するトラックによって細胞死に至る確率モデルを提唱し、国際会議にて報告した。
|