Research Abstract |
本研究は海水飛沫着氷のブライン排水に着目し,海水飛沫の難着氷,飛沫着氷の成長制御,飛沫着氷の簡便な除氷方法の開発を目的とする.本年度は3年計画の3年目に当たり,低温室での海水飛沫着氷再現実験と冬期現地実験で得られたデータの解析及び,難着氷雪素材の着氷試験により得られた知見を元に除氷方法を提案する.主に以下の8つの研究を行った.1,大型低温室で着氷軽減シートに強風としぶきを当てる実験を行い,その難着氷特性を実験的に調査した.この着氷試験により着氷初生,成長,剥落の様態,除氷難易度に関する知見が得られた(尾関,泉山).2,低温室において液膜流下による塩水着氷の成長実験を行い,気温,風速,塩水供給量などを変えた実験より海水飛沫着氷の成長過程の熱収支条件を調べた(尾関).3,試験材料の引張り強度,柔軟性,表面粗度の試験を行った(尾関).4,撥水性膜材料と親水性膜材料の着氷力試験を行い,着氷力の温度,塩分濃度依存性の評価を行なった(尾関,能條).5,低温室用ポータブルMRIシステムを用いて,海水飛沫着氷内部のブライン排水路3次元ネットワークデータを取得した.磁場のゆがみを補正するソフトを開発し,画像の改善を図った(尾関,巨瀬).6,天然と低温室で再現した海水飛沫着氷のブライン排水路の構造を骨梁構造の形態計測システムを用いて解析した.その結果,ブライン排水路のネットワーク構造が着氷の成長速度に依存して変化することがわかった(尾関,巨瀬).7,海水飛沫着氷の観察記録と気象・海象データより,浜益港で着氷が発達する気象条件を明らかにした(尾関).8,以上の結果をふまえてツリーイングの技術を応用した着氷軽減対策を提案し,浜益港の実験灯塔において実地試験を行った.この結果,スタティックロープを使った懸垂方法により冬期の波浪の打ち込みに対しても十分な耐波浪効果が得られることが実証された(尾関,泉山).
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