2009 Fiscal Year Annual Research Report
多言語地域における言語教育カリキュラムの開発-日越地域共同研究-
Project/Area Number |
19310158
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
村上 呂里 University of the Ryukyus, 教育学部, 教授 (40219910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 尚也 国立大学法人琉球大学, 教育学部, 教授 (60336360)
那須 泉 国立大学法人琉球大学, 法文学部, 非常勤講師 (20381204)
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Keywords | 少数民族 / 母語維持教育 / バイリンガル教育 / 対話生成型カリキュラム / 多文化共生教育 / 伝達から対話へ / マイノリティの自尊感情 / 生活作文 |
Research Abstract |
本年度は、計2回日越共同授業研究会を開催し、具体的な「授業」という場を共有し、共同で授業研究を行う中で、多言語地域における言語教育カリキュラム開発に関わる視点を明らかにしてきた。第1回目は、9月14日、琉球大学教育学部附属小学校「国語」の授業(宮城信夫教諭・有銘祐子教諭)をベトナム人研究者および小学校教員とともに参観し、その後授業研究会を行った。 第2回目は、2009年12月28・29日の二日間、ベトナムタイグェン省ボーニャイ郡クックドゥオン小学校にて、(1)琉球大学教育学部西岡尚也教授による「世界地図」を教材とした多文化理解学習、(2)クックドゥオン小学校Dang Thi Thao教諭による少数民族生徒に対する「ベトナム語」の授業、(3)Dinh Thi Minh Hoa教諭の少数民族の文化理解を目的とした「地理」の授業、(4)新宿区立大久保小学校善元幸夫教諭による「太陽と山に住む人たち」をテーマとした授業、この4つの提案授業を参観し合い、共同授業研究会を行った。 この2回の日越共同授業研究会を通して、(1)ベトナムでは未だ一般的な伝達注入式授業が主流であるが、少数民族の児童の尊厳を大切にしていくためには学習者を主体に据えた対話型授業への転換していくことが根幹となること、(2)マイノリティの学習者の母語を教授言語とするバイリンガル教育の意義として、親の文化の尊厳を守ることによる学習者の自尊感情の育成を根源に据えること、(3)学習者の思いや生活を表現する作文を学習材とし、そこからカリキュラムを組み換えていく対話生成型カリキュラム編成力を教員の実践力に位置づけていくこと等、言語教育カリキュラム開発の基本的視点を明らかにした。 なお、この時の授業および授業研究会に関する感想として、Mguen Thi Nhung「桜の国で感じたこと」(ベトナムタイグェン省の地方新聞「タイグェン新聞」2009年11月7日付発表)、Tran Thi Loan校長「琉球大学附属小学校についての私の印象」(書き下ろし)を発表している(いずれも日本語訳が、平成19年度~22年度科学研究費補助金研究成果中間報告書『多言語地域における言語教育カリキュラム開発-日越地域共同研究-』(多文化共生言語教育研究会、2010年3月)に掲載)。 また現在、沖縄地域の言語教育カリキュラム開発のために、地域言語文化の系統的学習の単元構想を示す副読本を作成中である。
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Research Products
(2 results)