2009 Fiscal Year Annual Research Report
「もの」とイメージを介した文化伝播に関する研究 ―日本中世の文学・絵巻から―
Project/Area Number |
19320022
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
池田 忍 Chiba University, 文学部, 教授 (90272286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 佳世乃 千葉大学, 文学部, 教授 (60235562)
久保 勇 千葉大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教 (10323437)
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Keywords | 美術史 / 文学一般 / 日本史 / 絵巻 / ジェンダー |
Research Abstract |
本年度は研究のまとめの年にあたるため、初年度より取り組んできた「絵巻画面分析表」の作成に力を注いだ。その意図は、.絵巻作品の中に「詞」が語り出すプロット(あらすじ)を越えて設定される「場」に着目し、またそれらの「場」を構成する一定の要素(「もの」)を含む「型」を抽出して、データベースを作成することにあった。ほぼ隔月で検討材料となるデータと図像を持ち寄り、検討を重ねて、十八作品に及ぶ試作的な<表>を、研究成果報告書に提示、その表に連動して考察を深め論考を執筆した。 提示した「絵巻画面分析表」の特徴は、<場の型>を基準として、絵巻画面を分節する点にある。<場の型>とは、人の行為によって立ち上がるイメージの型を指している。それは各論考において具体的に指摘されるように、必ずしもひとつの場がひとつの型に対応するのではなく、画中の出来事は画中人物の視点に応じて、もしくは物語の語り手や鑑賞者の立場から見て複数の型に対応する場合がある。描かれた「もの」と「場」の関係を、この「型」という視点を導入して探究してきた。言い換えるならば、中世絵巻に描かれた多様な「場」を「型」として捉え、共時・通時的な関係性を明らかにすることを目指し、一定の成果を上げた。 また本年度は、研究をまとめる上で不可欠な熟覧・調査を実施した。金刀比羅宮「なよ竹物語絵巻」、甲子園学院美術資料館・久米アートミュージアム「下燃物語絵巻」である。研究成果報告書、および参加者各自のこの期間の業績に、本年度を含む三年間の助成期間における熟覧・調査の成果を大いに生かすことができた。
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Research Products
(10 results)