2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19320058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 徹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20173015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 英樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20153207)
西村 義樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (20218209)
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Keywords | 言語学 / ダイクシス / 発話のコンテクスト / 視点 / 近接性 / 不定表現 / 数量詞 / 時空間存在文 |
Research Abstract |
今年度(21,22年度)の研究実績として、第1に、中国語(普通話)を中心に、日本語、日本手話、中国語諸方言(呉語、啓語)、韓国朝鮮語、トルコ語、シベ語(中国)、ベトナム語、ラマホロット語(インドネシア)について、指示詞、人称・空間・時間表現、移動動詞などダイクシス要素を詳細に検討した点があげられる。その結果、ダイクシス要素の用法に影響する要因として、(a)話し手を基準とした距離以外に、(b)コンテクストが持つ諸特徴(聞き手が指示対象に気づいているか否か、話し手と聞き手の共有知識に含まれるか否か、指示対象が発話場面に存在するか否か、指示対象が個体か否か、指示対象の近接性、など)、(c)話し手のとる視点・態度(1焦点か2焦点か、俯瞰的か当事者的か、対比的か否か、など)、(d)地形に基づく空間軸での位置、などがあることを確認することができた。しかし、これらの要因は互いに独立しているとは限らず、連関が疑われるものもある。さらに一般的な要因に整理することは、今後の課題としたい。なお、シベ語の調査だけは22年度に、その他は21年度に実施した。 今年度の研究のもうひとつの成果は、従来ダイクシス要素とは見なされていなかった表現にダイクシスとしての特徴が見られることを明らかにした点である。例えば、中国語の存在文に現れる不定表現や数量詞修飾は、リアルな時空間におけるリアルな<非既知>的事物の<存在>を言い立てるために用いられていることが実証された。またベトナム語においては、形式的に指示詞と類似している文末詞は、それぞれの文を具体的なコンテクストに結びつける働きをしていることを明らかにした。 最後に、映像データや音声データの整理・分析や、補助事業者や研究協力者の間の連携を進めるために、ウエブ・サーバの活用を試み、さまざまな経験を蓄積できた点も成果と考える。ただしデータの共有までには至らなかった。今後、共通フォーマットを考案するなど、検討を継続したい。
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Research Products
(7 results)