2008 Fiscal Year Annual Research Report
「隣語大方」の新研究-早稲田大学服部文庫所蔵「朝鮮語訳」に着目して-
Project/Area Number |
19320061
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸田 文隆 Osaka University, 大学院・言語文化研究科, 教授 (30251870)
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Keywords | 隣語大方 / 朝鮮語訳 / 対馬宗家文書 / 分類紀事大綱 / 倭館館守日記 |
Research Abstract |
本研究においては、「隣語大方」の所拠資料である早稲田大学服部文庫所蔵の「朝鮮語訳」全3巻の解読と文献学的検討(他の関連諸資料との照合)および言語学的検討を実施し、また、「朝鮮語訳」のデータベースを作成する計画であるが、本年度は、以下の研究・作業を実施した。 まず、解読については、計9回の研究討論会を開催して、「朝鮮語訳」対話篇の第51条から第105条までのかな書き朝鮮語部分・ハングル表記朝鮮語部分・くずし字表記日本語部分について、検討を加えた。 つぎに、文献学的検討については、「朝鮮語訳」の成立にかかわる諸資料との照合作業の一環して、「朝鮮語訳」対話篇の文例と、対馬宗家文書の「分類紀事大綱」および「倭館館守日記」との照合作業を実施した。その結果、「朝鮮語訳」対話篇巻2の文例のほとんどが、享保19年(1734)から元文2年(1737)の史実・歴史記録に対応するものであることが明らかとなった。この事実に拠り、本書巻2の成立年がそれ以降であることは明白である。また、この事実から、本書巻2は、雨森芳洲の建議によりこの時期に朝鮮語の稽古のため倭館へ留学した杉村久右衛門、梅野松右衛門、渡嶋源右衛門、春田治助らが,指南役である雨森芳洲の手元へ送った想定対語のレポートを材料として、語学書として編纂しなおされたものではないかと想像される。これらの研究成果は、朝鮮語史研究会および延世大学校国語国文学科BK21第3回韓国言語・文学・文化国際学術大会において発表した。 さらに、データベースの作成については、本年度解読のすんだ「朝鮮語訳」第51条から第105条までを入力し、デジタルデータを作成した。
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Research Products
(4 results)