2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19330020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 友信 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (10107485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 友敬 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (80209064)
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Keywords | 自動車事故 / 損害賠償責任 / 不法行為 / 自賠責保険 / 責任保険 / 社会保険 |
Research Abstract |
4年計画の最終年次に当たる平成22年度においては、平成21年度までの研究成果を総合して、自動車事故に関する責任と保険のあり方についての立法論的な方向性についての提言をすることを目指した。すなわち、平成21年度までの3年間において、運行供用者責任の要件(とりわけコンピュータによる通信システムを利用した交通システム(ITS)が及ぼす影響)、損害の確定方法、損害賠償算定基準のあり方を分析にしたが、いずれについても、自賠責保険、任意の自動車保険、政府保障制度など保険や保障の諸制度と表裏一体で実務が形成され、そこに多くの問題が内在していることが確認されたことを踏まえて、自賠法や自賠責保険、任意保険の改革の方向を明らかにする作業に努めた。具体的には、ITSの普及が本研究の4年の期間の間にも一段と進展し、すでに実用化が進みつつあることから、自賠法3条の運行供用者責任については、運行供用者の免責の余地を残す現行規定の問題性が明らかになっており、厳格責任化への改正が望ましいという結論に至った。また、任意保険に組み込まれた人身傷害補償保険に基づき保険給付をした保険会社の損害賠償請求権への請求権代位の問題を通じて、現行の損害賠償額算定実務には、複数の基準が並立しており、これが被害者や損害賠償義務者という損害賠償制度と保険のユーザーとでもいうべき当事者に理解不能なほど複雑な問題をもたらしており、損害賠償法と自賠責保険・任意保険とを統一的な視野に収めた新たな損害賠償額算定システムの創出が必要であるとの結論に至った。これらの成果に基づいて、自賠法および保険制度の具体的な改正の方向性を提案するための準備を進め、これは今後公表へ向けての作業をなお進めることとしている。これにより、本研究が当初目的とした研究課題は実質的には概ね達成できたものと考えられる。
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Research Products
(1 results)