2010 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場のミクロ的構造とフィリップス曲線-国際比較を通じた理論・実証分析
Project/Area Number |
19330039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北川 章臣 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60262127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 聰一 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60262838)
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
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Keywords | マクロ経済学 / フィリップス曲線 / 二重労働市場 / 効率賃金 / 雇用可能性 |
Research Abstract |
平成22年度の研究実績は次の通り。理論面では、前年度までに構築した二重労働市場モデルを数値解析の手法を用いて分析することを通じ、たとえ十分大きな労働需要が存在しても、企業の期待存続期間が労働者の期待就労期間よりも長い経済では、企業は結託して新卒一括採用を維持し自らの利潤を増やそうとする動機のあることを明らかにした。また、流動性ショックと労働市場でのサーチ行動を導入した二期間世代重複モデル構築し、インフレ率と失業率には非線形の関係(非線形のフィリップス曲線)が生じ得ることと、技術ショックや流動性ショックの確率過程の変化がフィリップス曲線をシフトさせる要因になり得ることの二点を理論的に明らかにした。一方、実証面では、2003年~2008年の家計のパネルデータによって、個別労働者の賃金と地域別失業率の関係を調べた。当該期間には、個々の労働者の賃金上昇率と失業率の間の負の相関関係を観測できなかった。また、ミクロレベルの賃金水準と失業率の負の相関(「賃金曲線」)も見出せない場合が多かった。ニューケインジアン型フィリップス曲線を念頭においた、賃金の期待値を変数に含んだ推計でも同様であった。一方、転職に際して賃金が減少し、とくに失業率が高い時期の転職で減少幅が大きいという傾向が一部観測され、それがマクロ賃金フィリップス曲線の関係(賃金上昇率と失業率の負の相関)をもたらす可能性が示唆された。これらの結果によって、賃金硬直性のあり方やフィリップス曲線の関係は、ミクロとマクロでその特徴を異にすることが示された。
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Research Products
(8 results)