2007 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀イギリスの経済社会改良思想:ニュー・リベラリズムからニュー・レイバーへ
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19330043
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関 源太郎 Kyushu University, 経済学研究院, 教授 (60117140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 哲男 九州産業大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90106790)
姫野 順一 九州大学, 長崎大学環境科学部, 教授 (00117227)
岩下 伸朗 福岡女学院大学, 人間関係学部, 教授 (50203378)
荒川 章義 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (50304712)
江里口 拓 愛知県立大学, 文学部, 准教授 (60284478)
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Keywords | 社会改良思想 / イギリス / 20世紀 / ニュー・リベラリズム / ニュー・レイバー |
Research Abstract |
本年度は、一方で研究課題の基礎的な部分を構成する方法論や思想的・理論的観点に、他方で政策・制度デザインの思想に重点を置いて研究を遂行した。まず、前者について、功利主義的な心理学の発展および古典派経済学の展開とイギリス経験論哲学の発展と関連づけて見直すと、19世紀後半以後について、C.ダーウィンの進化論が有した歴史的意義が強調されるべきである。というのは、これによって啓蒙思想以来の「人間本性」の生物学的な捉えなおし、したがっての神学から離脱が図られることになったと思われるからである。19世紀末から20世紀初めには、数学から出発したA.マーシャルが進化論的「経済生物学」を志向したのに対し,詩的嗜好もあったA.C.ピグーは静学的理論の精緻彫琢を進めたが、これらの両者の特徴はそれぞれの「国民分配分」論に看取できる。また、フォン・ノイマン研究を深めてみると、ゲーム理論における混合戦略が、ケインズ経済学とは別のもう一つの確率革命の所産としてどのような知的背景から構想されてきたかが浮き彫りになる。後者については、ニュー・リベラリズムを代表する一人であるJ.A.ボブスンが「福祉国家」形成の思想に大いに貢献したことを明らかにした。また、この時期の歴史展開について「スペンサーの社会進化論から社会制御論へ」という杜会論の展開構図を措定してみると、ウェッブ夫妻の行政学(社会制御学)がLSE設立から戦時経済を経て、「産業の民主的コントロール」に結実したことが明らかになってくる。最後に、1990年代半ばから本格化したニュー・レイバーの形成の過程において打ち出された思想を検討すると、ニュー・レイバーの思考には、現代世界における「リヴィジョニスト」としてニュー・リベラリズムと共通する思想が胚胎していることが判明する。
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Research Products
(5 results)