2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀イギリスの経済社会改良思想:ニュー・リベラリズムからニュー・レイバーへ
Project/Area Number |
19330043
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関 源太郎 Kyushu University, 経済学研究院, 教授 (60117140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 哲男 九州産業大学, 経済学研究科, 教授 (90106790)
姫野 順一 長崎大学, 環境科学部, 教授 (00117227)
岩下 伸朗 福岡女学院大学, 人間関係学部, 教授 (50203378)
荒川 章義 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (50304712)
江里口 拓 愛知県立大学, 文学部, 准教授 (60284478)
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Keywords | 20世紀 / イギリス / 経済社会改良思想 / ニュー・リベラリズム / ニュー・レイバー |
Research Abstract |
まず19世紀イギリスにおける功利主義的・自由主義的改革思想の起源と発展の過程を再構成するための基礎的な概念である人間本性について検討した。18世紀末のスミスの思想には人間本性に関する生物学的解釈を看取することができる。その内容は利己心と相互的利他心とを結合したものであり、また19世紀の社会進化思想の起源は心理学にあるように思われる。つぎにマーシャルの生物経済学について取り上げた。この「生物経済学」には進化論的思考が刻印されており、その論理展開は主著『経済学原理』から後続の『産業と交易』までたどることによって初めて十全に理解できることが明らかになった。他方で、同様に進化論的思考を内在させていたホブスンのニュー・リベラリズムの見地から、自由帝国主義者(ゲレイ、アスキス等)、キリスト教社会主義者(トーニー)および正統派経済学者(マーシャル、ニコルソン、ピグー)などの社会福祉概念についても比較検討した。さらにウェッブ夫妻の経済思想とLSE設立の背景との関連について検討した。その結果、19・20世紀の転換期における「国民的効率」の問題が、ニュー・リベラリズムや労働党が現実の社会・政治・経済運動において意味を持つ契機となったこと、また、このことはイギリス帝国再建問題と絡めて捉え直される必要があることが判明した。さらに、戦後に目を転じ、従来50年代に労働党左派と対決したリヴィジョニズトと位置づけられてきたクロスランドについて取り上げた。彼の「平等・公正」論を子細に検討すると、このような従来の位置づけは誤りではないが、視野を労働党内からイギリスの経済社会改良思想全体に拡げた場合、むしろこの時期のニュー・リベラリズムの一つの展開と見ることができるし、さらに、彼の思想は、現代のニュー・レイバーのブラウンによる「平等・公正」論の起源の一つとなっているように思われる。
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Research Products
(3 results)