2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀イギリスの経済社会改良思想:ニュー・リベラリズムからニュー・レイバーへ
Project/Area Number |
19330043
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関 源太郎 九州大学, 経済学研究院, 教授 (60117140)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 哲男 九州産業大学, 経済・ビジネス研究科, 教授 (90106790)
姫野 順一 長崎大学, 環境科学部, 教授 (00117227)
岩下 伸朗 福岡女学院大学, 人間科学部, 教授 (50203378)
荒川 章義 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (50304712)
江里口 拓 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (60284478)
|
Keywords | 20世紀 / イギリス / 経済社会改良思想 / ニュー・リベラリズム / ニュー・レイバー |
Research Abstract |
平成21年度に計画した国際ワークショップを、平成22年度に計画してたものと合わせて、3人のイギリスの研究者を迎えて平成23年1月7・8・9日に第3回国際ワークショップとして実施した。報告と討論のテーマは、大別すると、(1)ニュー・リベラリズム思想の哲学的基礎の形成、(2)ニュー・リベラリズムの思想的展開、(3)ニュー・リベラリズムに対抗するニュー・ライト(ネオ・リベラリズム)の思想形成と展開、(4)ネオ・リベラリズムから現代ニュー・リベラリズムと目される「ニュー・レイバー」への形成である。それらの要点は次の通り。(1)ニュー・リベラリズムの形成に大いに貢献した哲学として、人間の道徳感覚も自然淘汰に基づき解明したC.ダーウィンに影響されたD.C.リッチーの進化論に注目すべきであること。(2)20世紀前半に全面開花したニュー・リベラリズムの経済社会改良思想は多様な展開を見せ、かなりの改革思想はニュー・リベラリズムの変異形態と見なすことができること、さらに個別的な形態としてウェッブ夫妻の福祉国家論は国際競争場裏において国内の経済効率の改善を構想したこと、またJ.M.ケインズによる経済思想における「ケインズ革命」は科学思想史上の「確率革命」の産物であること。(3)ニュー・リベラリズムにも思想的に対抗すべきものとして展開されたモン・ペルラン協会の活動に関係した実業界経済学者の役割が重要であること、さらに保守党首相のサッチャーによって戦後の「コンセンサスの政治」はレトリックとして完全に崩壊させられたが、彼女自身は政治の世界において「レトリック」を決して放棄しなかったこと。(4)ネオ・リベラリズムの政権であったサッチャー政権の後を受けたメジャー政権の医療政策とその思想は、サッチャリズムを継承しつつも政府として提供医療の「質」の向上を意図し、この点が現代のニュー・リベラリズムと理解される「ニュー・レイバー」に受け継がれたこと。
|
Research Products
(4 results)