2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀イギリスの経済社会改良思想:ニュー・リベラリズムからニュー・レイバーへ
Project/Area Number |
19330043
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関 源太郎 九州大学, 経済学研究院, 教授 (60117140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 哲男 九州産業大学, 経済・ビジネス研究科, 教授 (90106790)
姫野 順一 長崎大学, 環境科学部, 教授 (00117227)
岩下 伸朗 福岡女学院大学, 人間科学部, 教授 (50203378)
荒川 章義 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (50304712)
江里口 拓 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (60284478)
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Keywords | 20世紀 / イギリス / 経済社会改良思想 / ニュー・リベラリズム / ニュー・レイバー |
Research Abstract |
古典的リベラリズムの時代的な行き詰まりからニュー・リベラリズムが形成されてきた歴史過程について、これまで主に経済論や政策論の側面から明らかにしてきたが、その哲学的側面からの解明を新たに社会進化論の展開として行った。その結果、人間の道徳感覚も自然淘汰によって説明するダーウィン進化論に影響を受けたD.C.リッチーの進化論は、自由を拡大するために国家による規制・統制も必要だとするニュー・リベラリズムの思想へと古典的リベラリズムの思想を転換させたことを改めて論証した。さらに、20世紀前半のニュー・リベラリズムの帝国構想やニュー・リベラリズムの定義について再考を重ね、その歴史的多様性へのアプローチを試みた。またLSEを中心としたウェッブ夫妻の福祉国家論は国際競争を視野に納めつつ国内効率の改善を目指していたが、それは、内需主導型のケインズ主義の影響力の強さ故に、イギリスでは根付かず、むしろスウェーデンにおける福祉国家として開花したことを新たに明らかにした。また、海外研究協力者の支援を受け、ニュー・リベラリズムの成立はほどなくネオ・リベラリズムの形成を促したことを論証する手がかりを得た。1980年代以降の展開について、これまで軽視されてきたメジャー保守党政権を、ネオ・リベラリズムの政策を展開したと理解されるサッチャー保守党政権とそれに対抗したニュー・レイバー労働党政権の間に時間的に位置した事実を改めて重視すると、メジャー政権の諸政策はニュー・レイバー政権によって精緻化され系統化されたことが明確になった。そのうえで、ニュー・レイバー政権の経済社会改良思想は、現代の時代環境の変化のなかでのニュー・リベラリズムの思想の適用を意味することを明らかにし、20世紀イギリスの経済社会改良思想はニュー・リベラリズムの思想を軸に理解できるこという研究計画の主張を新たに強化した。
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Research Products
(5 results)