2009 Fiscal Year Annual Research Report
語圏によるNPO、NGO国際ネットワークの研究―――言政学を目指して
Project/Area Number |
19330124
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
出口 正之 National Museum of Ethnology, 文化資源研究センター, 教授 (90272799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 祐子 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (80276451)
廣瀬 浩二郎 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 准教授 (20342644)
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Keywords | 言政学 / 言政学価 / NPO / NGO / グローバリゼーション / Linguapolitics / Linguapolitical valence / 視覚言語 |
Research Abstract |
今年度は第二次言政学において著しい進展があった。国際シンポジウム「点字力の可能性--21世紀の新たなルイ・ブライユ像を求めて」(於国立民族学博物館)を開催。そこで言語の受容器官から、聴覚言語、視覚言語、触覚言語に分け、点字の触覚言語としての特性を明らかにした。また、このことから、盲聾者の使用する、「触点字」「触手話」の「字」と「話」の区別が無意味であることを明らかにした。 こうした第二次言政学での研究成果の発展は第一次言政学においても大きな影響を与えた。使用言語の選択は政治的選択であり、資金源を国内だけでなく海外のファンダーにももとめる国際NGOの場合、活動地域、NGOの本拠地、ファンダーのいる地域などが異なりしばしば複数の言語を使うことを余儀なくされる。世界言語として流通している英語の場合、さまざまなコンテクストにおいてその重要性が変わってくることが確認された。たとえば中国語(北京語)を公用語とする東アジアの中国、香港の国際NGOにおいては英語が海外のファンダーとの間のネットワーキングには欠かせない。メールなどでも英語は使用されることが多いが、活動地域間のNGO支所や現場とのやり取りでは急速に地域言語である広東語などの地位が低下し、かわって北京語が実際の活動地域間の取引言語となってきている。だが上海や北京などの都市部では教育ある若い層を中心にボランタリズムを海外との取引言語としてとらえようとする人々が増えており、彼らが希望する英語でのコミュニケーションやセミナーにたいする需要は高まっている。南アジア(インド)では国際NGOにあっては英語の使用度が圧倒的に高いものの、地域言語の重要性が活動地域内で重視され、その比重は増している。だが政治的な選択として現地地方政府が推進する地域言語化に対しては、一般には否定的である。一般大衆およびNGOスタッフにおいては英語に対する信頼度が高く活動地域の村落部であっても英語が使用できるバイリンガルスタッフの地位は高くインターネットの普及とあいまって直接海外のファンダーと取引ができる言語としての英語のネットワークは現地政府の思惑とは逆に強まっている。
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