Research Abstract |
白亜紀前弧海盆の堆積物である蝦夷層群とその後背地である中国大陸の陸成白亜系の間の 化石層序,炭素同位体層序,シーケンス層序に基づく対比と両地方の古環境についての解明と比較を検討して来た.その結果,これまでに蝦夷層群の炭素同位体層序と化石層序を組み合わせた国際対比について成果を得ることが出来た.また,空知層群から蝦夷層群に移行する過程に於ける化学組成の変動とその性格について明らかに出来た.他方,中国大陸の熱河層群相当層の炭素同位体層序もほぼ完成を見,国際対比が出来ることになった. これらの成果を得る一方,中国大陸の陸成層の藻類に富む地層群と炭酸塩に富む地層群については,十分な検討が技術的に出来なかった.炭素同位体比測定の試料準備にあたって藻類を除去する方法は開発しつつあり,一定の目処が得られている.しかし,陸成炭酸塩堆積物の炭素同位体比測定前の処理については未解明であった. そこで,2009年度は重慶市北方に分布するジュラ系自流井層を対象として,特に陸成炭酸塩から構成されている層準について化石,炭素同位体,シーケンス層序学の観点から野外調査と試料の採集,その後の分析を進めた.全体に河川,湖沼性の堆積物であることは現地での堆積学的検討により明らかにすることが出来た.採集した化石及び分析用試料は,日中両国の税関検査を経て2010年1月になって日本に着いたので,まだ十分な結果を得ていない.しかし,いくつかの層準から淡水性二枚貝,巻貝類の化石を得ることが出来,これらについては目下剖出作業中である.炭酸塩堆積物は,砕屑物は石英で,基質が炭酸塩である.一部苦灰岩となっているところもあったが,それらを除いて,質量分析をほぼ全試料について行なった.得られた同位体値とその変動パターンについて目下,分析を進めているところである.
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