Research Abstract |
すぐれた不斉触媒反応の開発は,有機合成化学における最も重要な課題に一つである。これまで,(R)-BINOLより調製した光学活性環状リン酸ジエステルが,イミンに対する,付加反応,付加環化反応等において,すぐれた不斉触媒能を示すことを見出してきた。マンニッヒ型反応の反応機構を明らかにするために,量子化学計算を行った。 (R)-BIPHENOL由来のリン酸をモデルとして用いて密度半関数であるBHandHLYP/6-31G*レベルで理論化学計算を行い,リン酸とイミンとの錯体の安定構造,更に,マンニッヒ型反応の遷移状態を計算した。リン酸のホスホリル基がイミンの窒素置換上のフェノール性水酸基と水素結合を形成し,9員環遷移状態を経て付加反応が進行することを明らかにした。 これまで,リン酸を用いた不斉触媒反応においては,求電子剤として,ほとんどの場合イミンが用いられてきた。イミン以外の基質に対する不斉触媒反応を開発することが出来れば,リン酸触媒の有用性が大きく発展すると考えられる。そこで,イミン以外の基質を用いてリン酸の触媒反応を検討した。求電子剤として,α,β-不飽和ケトンを用いた反応について検討した。テトラロ由来のβ-ケトエステルを求核剤として用い,メチルビニルケトンとの1,4-付加反応において,3,3'-位に2,4-(CF_3)_2C_6H_3基の置換したH_8-BINOL由来のリン酸を用いることにより,最高83%eeで対応する1,4-付加体が得られることを見出した。
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