2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19360276
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平山 洋介 Kobe University, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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Keywords | 女性 / ジェンダー / 住宅所有 / 持家社会 / 住宅資産 / 配偶関係 / 住宅事情 / 住宅政策 |
Research Abstract |
財団法人家計経済研究所の「消費生活に関するパネル」調査を用い、女性のライフコースと住宅履歴の関係を明らかにした。その結果、(1)女性のなかで住まいの「梯子」を登っているのは有配偶者にほぼ限られる、(2)未婚女性の大半は年齢が上昇しても、親の家にとどまる場合が多い、(3)離婚を経験した女性の住宅条件はとくに厳しく、その大半は民営借家に住んでいる、(4)有配偶女性の多くは持家取得に到達するが、その持家のほとんどは夫の所有物で、女性個人の住宅資産はきわめて少量にとどまっている、(5)しかし、他方において、正規雇用での就労を続け、所得の高い有配偶女性は自身の持ち分をもつ傾向がある、等の点が実証的に明らかになった。 以上の分析からは、住宅所有が明確にジェンダー化していることを指摘できる。日本では「男性稼ぎ主」が住まいを所有し、そこに妻を住まわせる、という形態が住宅所有の基本パターンである。しかし、これに並行して、こうした伝統的なパターンが持続するとは限らないことが指摘される。女性就労の増大、「男性稼ぎ主」の雇用と所得の不安定化、デフレないし低インフレ率の経済による住宅ローンの早期返済圧力などのもとで、夫婦共有の持家が増える可能性が高い。また同時に、無配偶女性が一貫して増える傾向に注意しておく必要がある。これらの点は、女性というグループの内部において、高所得の共稼ぎ夫婦、伝統的な「男性稼ぎ主」型世帯、低所得の夫婦、未婚を継続する女性、離別女性など、新たな階層化が進行し、そのことが持家社会の変容において大きな役割を果たすことを示唆している。
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