Research Abstract |
駿河-相模湾沿岸,八丈島,房総半島沿岸,紀伊半島沿岸において野外調査を行なった。その結果,新たに20以上の未記載分類群を発見した。この中で,特にPolycope科の種については,これまで同一種であると考えられていたものが,上唇の形態から数種類に形態分類され,交尾器の形態と関連付けてみると,それらが独立した種である可能性が高くなった。また,Cytheroma科の種については,DNAの塩基配列の解析を開始し,特に駿河湾-相模湾沿岸に分布するMicroloxoconcha属について,生物地理学的な知見とともに,その種分化の過程を明らかにした。特に,交尾器も含めた他の形質はほとんど同じで,大きさだけがおよそ脱皮1段階(1齢)分異なる大小2つの形態群については,種としては分化していない可能性を示唆した。また,1つの種が伊豆半島を隔てて東西に分かれて分布することに関しては,東西では遺伝的交流が絶たれており,それが伊豆半島の成立に関連していることを示唆した。同時に,表在性種との系統関係が不明だった間隙性種についても,DNAの塩基配列から,祖先-子孫関係が明らかになりつつある。さらに間隙性種が水分,塩濃度,温度等の変化の激しい環境に生息していることに着目し,表在生種との耐温度,耐塩濃度に関する比較実験を行ない,間隙性種が極めて高い耐性を持つことを明らかにした。 上記の研究成果は学術誌,学会大会,単行本,市民講座,テレビ番組において公表された。
|