Research Abstract |
大腸菌走化性受容体は,菌の極で巨大クラスターを形成する。この性質は,シグナルの増幅や適応に重要である。ところが,走化性受容体がどのようにして細胞の極に局在するのかという基本的な疑問については全くわかっていない。本研究では,これまでの走化性システムに関する研究を発展させつつ,より視野を広げて,細胞骨格系や脂質との相互作用,走化性以外の環境応答系の局在,コレラ菌におけるパラレルな3つの走化性類似システムの使い分けや病原性との関連なども含めて解析している。本年度得られたおもな成果は,以下のとおりである。 1.膜貫通型蛋白質の細胞内局在化機構:走化性受容体(GFP融合体)に欠失変異や点突然変異を導入した解析から,膜貫通領域直下のHAMPメインが局在に関与することを見出した。また,走化性受容体およびそれと相同性をもつ酸化還元センサーが極で共クラスターを形成することを見出した,さらに,全部で28種ある大腸菌ヒスチジンキナーゼ(うち2種は細胞質蛋白質)についてGFP融合体を作製した。一方,全反射型蛍光顕微鏡を用いて,細胞膜中ての受容体蛋白質(GFP融合体)の動きを観察することに成功した。 2.膜蛋白質・細胞質蛋白質の局在制御受容体と共局在するタンパク質のうち,受容体メチル化酵素・脱メチル化酵素の局在制御について解析し,とくに脱メチル化酵素か受容体のメチル化自体によって局在を大きく変えることを見出した。 3.コレラ菌における3組の走化性相同システムの機能と局在コレラ菌は,3組のChe蛋白質群(Cheシステム)および45種の走化性受容体様蛋白質をもつこのようなパラレルなシグナル伝達系か,どのように使い分けられているのか解析するため,GFP融合体を作製した.とくに,走化性に直接関与しない系の構成蛋白質が,環境条件によってその局在を変えるという予備的結果を得ている.
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