2008 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸酵素の分光学的性質に基づく収穫後植物の酸素吸収と同化産物代謝速度の非浸襲予測
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19380140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 義雄 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70376565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
川越 義則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80234053)
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Keywords | 植物 / 呼吸速度 / 近赤外分光分析 |
Research Abstract |
収穫後植物の主要な鮮度低下要因は、生理活動としての同化産物の消費による保有栄養成分の損耗であり、その遅速は、呼吸によって制御される。そこで本研究では、収穫後植物内の呼吸酵素(チトクロームcオキシダーゼ)の分光学的特性を明らかにすることにより、分光分析により、迅速かつ非浸襲的に呼吸速度を判定する手法を検討した。 まず、トマト果実の呼吸速度を近赤外分光分析で判定する手法を検討した。果実個体の分光反射スペクトルを700~950nmの範囲で測定するとともに、同じ個体の呼吸速度をガスクロマトグラフィーで測定した後、ニューラルネットワークにより、分光吸光スペクトルと果実質量から呼吸速度を予測するための計算式を構築した。計算式の予測精度を検証した結果、検証の相関係数は0.79、予測標準誤差は0.091mmol/kg/hとなった。計算式には、833nm付近の吸光度値も組み込まれていたことから、当該波長における光の吸収が呼吸酵素に由来することと、呼吸速度の予測に有効であることが示唆された。本研究成果は、分光分析による迅速な植物の呼吸速度判定の可能性を示唆するものである。 松岡の方法(名古屋大学博士論文,1983)に従ってトマト果実からミトコンドリア(呼吸酵素を組み込んでいる細胞小器官)の抽出液を得た。抽出液の分光吸光スペクトルを測定したところ、840nm付近に光の吸収バンドが認められた。牛の心筋から抽出したチトクロームcオキシダーゼを試料とした既往の研究(Griffiths and Wharton, J.Biol.Chem., 236, 1850, 1961)では吸収バンドは830nmであり、本研究と既往の研究では、呼吸酵素の分光吸光特性が異なる結果となった。これは、試料の違い等様々な要因に由来するバンドシフトが起きたためと考えられる。 さらに、シロイヌナズナおよびコマツナを試料として、分光吸光スペクトルから呼吸酵素濃度と呼吸速度を予測する手法を検討した。しかし、葉部は厚みが1mm未満であることから、透過光から得られる情報量が少なく、分光分析による呼吸速度の予測は困難であった。このことから、近赤外分光分析を呼吸速度予測に応用するには、組織にある程度の厚みがある品目を選択する必要があることが明らかになった。
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