Research Abstract |
低病原性ウイルスであるシンドビスウイルの腫瘍特異的吸着能を有するリガンドを融合したリボソームを開発するために,リポソームの組成,ウイルス蛋白の精製,細胞への吸着能評価をするマーカーの検討を行った。 まず,リボソームの組成に関しては,ウイルス蛋白を混入できる許容性と,経時的,物理的安定性を持った組成を検討した。基本脂質は,細胞膜主成分であるphosphatidylcholine,Cholestero1として,さらに,L-α-dimyristoyl phosphatidic acid,sphingomyelin,phosphatidylserineを加えて検討した結果,phosphatidylserineが安定した性能を示した。次に,ウイルス蛋白の精製に関しては,最初の段階としてウイルス全構造蛋白をリポソームへ融合することとして,純度の高い蛋白の精製法を模索した。その結果,ウイルスを超遠心法濃度勾配濃縮し,GTNE Bufferで24時間浸潤後超音波破砕を行い,さらに,紫外線を30分間照射してウイルスの核酸を失活させる方法が最も効率的であった。最後に,マーカーとしてはリポソームの内水層へ内包するGFP蛋白やFITC-dextranと,リポソーム脂質内に標識するrhodamine脂質を検討した結果,吸着能評価にはrhodamine脂質を0.2mo1%添加すると有効であることが判明した。 以上の結果から,rhodaminにて蛍光標識したリポソームと精製したウイルス全構造蛋白を融合処理して経時的安定性を確認し,さらに,脂質濃度0.2mMでリポソームを癌細胞株に添加培養したところ,蛍光観察にてウイルス蛋白と融合処理したリポソームがより多く吸着していることを確認できた。 今後,各ウイルス構造蛋白のcDNAを作成して蛋白発現を行い特異的吸着能をコードする領域を同定し,さらに,多種の癌細胞株,また,正常細胞株を用いて吸着能の評価も行う予定である。
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