2007 Fiscal Year Annual Research Report
複雑系カオス解析を用いたバイタルサイン情報の測定手法の開発
Project/Area Number |
19390545
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川口 孝泰 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (40214613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 利江 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (80254473)
浅野 美礼 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (00273417)
東 ますみ 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (50310743)
佐伯 由香 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (70211927)
市川 政雄 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (20343098)
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Keywords | 指尖容積脈波 / 複雑系カオス / 健康 / 微小循環 / 自律神経 / ストレス / 看護用具 / 継続看護 |
Research Abstract |
本研究によって実用化を目指している加圧式指尖容積脈波計測は、指先に段階的に加圧負荷(トリガー)した際の微小循環の反応の変化を捉え、加圧負荷を加えた際に変化する脈波形の反応動態を、複雑系カオスにより解析ずることで、生命兆候の予期的変化を捉えるものである。指先の加圧による段階的な脈波変化については、生命兆候の各段階における複雑系カオスの特性(リアプノフ指数値やエントロピー値等)と生命兆候と関連することについては、これまで行ってきた基礎的な研究によって実証されている。今回の研究は、実用化に向けた検証研究を行っていくことが目的である。 初年度である平成19年度は、段階的に加圧負荷を指先に加える装置を組み込んだ指尖脈波計を試作し、これまでに多くの研究で使用されている自律神経の解析手法との関連について検討を行った。その内容は、指先で測った場合の高次元非線形時系列データの複雑系カオス次元の特性と、これまでに多くの研究で実証されてきた連続血圧計(オムロン・コーリン社)を用いた橈骨動脈の脈波形の解析結果(ウェーブレット解析による自律神経反応)、および心臓自律神経によって得られたゆらぎ解析の結果との比較により、今回の手法で得られる独自性の部分について検討した。 その結果、平常時(加圧を加えない場合)での指尖脈波の複雑系カオス次元の特性(ローレンツプロット、ポアンカレセッション、フラクタル次元解析、自己相関・相互相関など)は、橈骨動脈のウェーブレット解析した結果得られた自律神経反応との間に相関がみられた。また、心臓自律神経との間にも同様の相関が得られた。しかし、指尖に加圧を加えた場合における非線形時系列データの特性変化では、これまでの測定手法では捉えられない変化が見られた。指先の加圧に伴って得られた指尖容積脈波形の特性変化(微小循環に起こる変化)は、これまでの自律神経反応の一時的な変化の状態ではなく、日常生活における日内変動レベルの生体反応を代表するような特徴的なデータを含んでいることが推測された。この変化は、これまでの自律神経反応を測定する手法として確立している橈骨動脈での計測法や、心臓自律神経のゆらぎ解析によって得られる結果とは、明らかに異なる変化を捉えていることが示唆される。今後の研究の方向性として、加圧による指尖容積脈波の変化が、日内変動レベルで生じる疲労や健康状態の病態的な変化、および感情や情動などによる影響等との関係について研究を進めることで、この装置が、どのような新しい生命徴候の状態を捉えているのか、また、その変化が、どの程度の正確さで捉えることが可能なのかについて実証していくと共に、日々の健康状態の変化との関係について、遠隔看護のシステムのなかに導入することによって、その有用性について検証していく予定である。
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